スマホはダメでもSwitchはOK


 今回のエピソードを見てちょっと意外に思ったのは、この精霊が伝えてる声、そして精霊そのものの姿は、小糸以外の人間にも見えているんだな、ということ。コマちゃんは明らかに精霊を見て反応しているし。コミックスを読んだ時には、この精霊の姿を見ることができ、声を聞くことができるのが巫女の特殊能力みたいな感じなのかとも思ってたんだけど、アニメの演出を見る限りではそういうわけではないらしい。
 エルダもヨルデもハイラもすごいと思うのが、それぞれに文明の利器を結構使いこなしていること。ヨルデはハイヤーを使い、ハイラは一人で夜行バスに乗っていた。エルダにしても電話が嫌いとか言ってるけど、それは他人とコミュニケーションするのが苦手なだけで、Switchとかでは遊んでいるし、テクノロジーの産物そのものには抵抗がなさそうなんだよな。第1話でも言ってたように、普通エルフのイメージというと割と保守的なイメージがあるんだけど。
 ただ言い方を変えれば、彼女たちは召喚された瞬間から身の周りに自分の知らない文化しか存在しなかったわけで、受け入れていかないと生きてこれなかったのかもしれない。そう考えるとちょっと物悲しくはある。

マスタースクリーンにダイスを受けながら


 1巻2巻も面白かったんだけど、3巻でようやく作者がいう「20点」、つまり外れ、まずいものを引いたパターンが登場した。作者には申し訳ないけど、これがなかなか面白かった。今までは当たりでものすごく美味いものを引き当てたパターンしかほとんど描かれていなかったし。
 これに触発されたというわけでもないけれども、私自身の体験もちょっと書いてみようと思う。コロコロ少年同様、ネタ元をちょっと捩らせてもらうと、題して「マスタースクリーンにダイスを受けながら」だ。


 私は以前、プレイグループの仲間たちとTRPGの合宿をやっていたことがある。当時これは結構条件が厳しかった。というのは、ホテルなどを使って合宿しようとすると、昼間部屋に籠るのでチェックアウトしないことになるからだ。ホテルは客がチェックアウトしてる間に、ベッドメイキングをしたり色々なことをしてるわけで、昼間客が全くホテルを出ないというのあまり想定されていなかった。少なくとも私が幹事をやっていた頃は、それを理由に断られることがしばしばあった(今はどうなのかわからない)。あくまでも夜を宿泊するための施設であって昼間を過ごすための施設ではないから、断られるのも無理はない。そんな中で昼間も部屋にいてTRPGをやってもいいと許してもらえる宿というのはなかなかないので、一旦決まると中々他の所には変えないスタイルだった。

 その頃使っていた施設は、昼間チェックアウトしないということに理解を示してくれただけではなく、使っていない宴会場を(もちろん料金は払ったが)昼間貸してくれたり、協力的な宿だったので、便利に使わせて頂いていたのだけれども、ある時想定外のことが起きた。「大口の団体宿泊客の予定が入ったので、部屋が足りなくなるから我々の予約をキャンセルさせて欲しい」というのだ。先に予約を入れたのはこちらだったので、後からキャンセルしろというのは、今だったらそれこそSNSとかに上げられてしまうような案件かもしれないが、我々は先にもいったとおり無理に協力してもらっていた面もあるので、それ自体は仕方ないということでキャンセルすることにした。先方も申し訳ないと思ったのか、代わりの施設を紹介してくれるという。数駅離れたところにある施設に話を通しておくので、是非そちらに行って欲しい、と。こちらとしては断る理由はなかったので、紹介されたその施設に向かったのだが、ここが問題の施設だった。
 元々予定していたのはホテルだったが、紹介された施設はどう見てもホテルというより民宿。民宿であること自体は別に問題はなかったのだが、初日の夕食が想像を絶していた。

全てが凍っている

 色々あって疲れ果てていた一行が食事を口にしたところ、まず後輩が「刺身が凍っている」と言い出した。たまたま悪いものに当たったんだろうと、そんな友人を横目に卵焼きを口に運んだ私の口内で、シャリっという食感がする。卵焼きを食べているというよりシャーベットを口にしたような感覚だ。卵焼きも凍っている。刺身を冷凍にするのはまだ分かるが……戸惑いつつ白米を口にしたら、こちらも凍っている。当時は、炊いたばかりのお米をサランラップで巻いて凍らせるライフハックなんていう話が出てくるよりずっと前の話だ。
 しかも凍らせたことだけが問題ではなく、半端に炊いたものを凍らせたようで、時間が経って解凍されてきても周りはベチャベチャしている上に芯が固く、すえたような悪臭まで漂ってくる。宿のある場所は海が近いはずなのに、自然の幸も何もあったものではない。唯一暖かいのは味噌汁だけだが、こちらはこちらで得体のしれない青菜が具で、口に入れても青臭さどころか何の味もしない。友人たちの顔を見回すと、どうやら全員の食事が同じ状況のようだ。
 悪いことに、この施設は中途半端な陸の孤島のような場所にあり、周りは風光明媚というわけでもなんでもない(むしろ道路だらけで眺めは悪い)のに、コンビニもない。我々は昼を宿で過ごすために昼ご飯は持参していたものの、夕飯が食べられたものではないので、代わりに昼食として持ってきたものを食べるしかなくなってしまった。となると、翌日食べるものがなくなる。
 当然というかなんというか、朝食も食べられたものではなかった。世の中には、市販の冷凍ハンバーグを解凍するだけなのに不味くなるというケースが存在するのだと、私は初めて知った。この宿で唯一まともに口にできるのは、麦茶だけだった。

 本当に前のホテルから話は通っているのか? 心配になった我々は、翌日宿の管理人を探したが、そこでまた驚いた。なんとこの民宿は、昼間人がいないのだ。チェックアウト中に部屋を掃除するも何も、誰一人施設の人間がいない。ただ朝と夜の食事のタイミングで謎の老婆がやってきて、支度らしきものをするだけである。我々の行動に合わせて昼間を空けてくれたのかと思ったが、話を聞く限りそうではく、普段からこうらしい。これでは留守宅を借りているのと大して変わらない。まだ、民泊などという制度ができるより前の話である。

 これで「食事が酷いせいもあってセッションも最悪で~」となればネタになるが、TRPGのセッションそのものは非常に面白く、後にロングキャンペーンになるようなシナリオを何本もプレイできた。



 セッション体験が素晴らしかっただけに、食事の不味さや穴だらけの襖や障子、変色した壁、固い煎餅布団の印象との落差が激しすぎて、鮮明に記憶に残っているのである。

 もちろん、翌年以降紹介元のホテルを二度と訪れることがなかったのは言うまでもない。