近接にて最強王子


 ローレシアの王子のゴーグルの話は初めて聞いた。つまり鳥山明氏としては、ドラゴンクエスト2をスチームパンク的な作品としてデザインしていたってことなのだろうか。確かにそう考えると、サマルトリアの王子も似たようなゴーグルを着けているし、キラーマシンが出てくるのもドラクエ2からだし、ちょっと捻った文明の進歩したファンタジー作品としてイメージしていた可能性は確かにあるかもしれない。しかしムーンブルクの王女の装備は普通で、近代的なものをイメージさせるものは別段身につけていない。
 それと、ローレシア王子を語る時に時折ネタになるこの「銅のつるぎと50ゴールドで送り出した」という話についてだけれど、確かに昔は「もっと路銀をくれてもいいじゃないか」と思っていたが、クラシックダンジョンズアンドドラゴンズのガゼッタというワールドガイドの記載を見てちょっと考え直した。
 ガゼッタの1冊目で「カラメイコス大公国」というPC達の旅のスタート地点となる国が紹介されている。その国の貴族には、若者が一人前であることを示すために、一定の年齢になった時に身分を隠して冒険者として旅立つという、シィアニングセレモニー(はぎとりの儀式)という風習がある、というのが紹介されている。


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 旅立つ時にわざわざ若者の服を破ってボロボロにして、貴族でも路銀は最低限しか持たせず、後は自分で稼げ、というものだ。その状態で一定の期間を過ごし、自分が一人前であることを示すまでは帰ってくるな、という風習なのだが、この存在を知ってドラクエローレシアの王子もこれと似たようなものなんだろうと思った。
 ましてやローレシア王子は単なる貴族ではなく王族なわけで、自分が一人前で王の後継者であるに相応しい人間であるということを(特にその勇敢さを)国民に証明して見せる必要がある。そう考えると、もちろんメタ的な意味でゲーム的な都合もあるとはいえ、それほど不自然な設定ではないのかもしれない。
 この時に路銀をたくさん持たせたり、豪華な装備を持たせたりしていると、逆に危険だとも言える。それによって狙われることもあり得るし、ハーゴンが仕向けた知恵の回るモンスターだったら、王子を人質にとってローレシアを自分の支配下に置こうと考える可能性もある。
 そう考えると、王族然とした格好をせず、質素な装備を持って旅立ち、しかも従者も供の者も連れていない、というのはそれはそれで合理的ではある。何より王子たち自身がそこらの兵士たちよりはるかに強く、ロトの英雄の血を引いている人間となればなおさらだ。