引き出しの中身は


 共感できるところと、ジェネレーションギャップを感じるところが半々という感じだった。例えば冒頭に出てくる「個人サイトを印刷する」なんていうエピソードは、私が学生の頃にはまだ個人サイト……いや、インターネットというものがまだなかったので、それを印刷するという概念もなかった。ただ、私自身が鍵付き引き出しに入れていたものは、1つを除いて全てランキング内に出てくるので、我ながら個性がないな、と。
 記憶にある一番古いものだと文房具、それも普段使うような文房具ではなく、ゲテモノ系の文房具をよくそこにしまっていた。正式にはどういう名称なのかと思って調べたところ、どうも「多機能文房具セット」とか言われるのが一般的らしい。なんかお得感があって買ったのだが、当時のそれは実用性は皆無に等しく、結局使うことはなかった。



 そこからちょっと年齢を重ね、この企画の趣旨に合うような年頃になってきたところで引き出しに入れたのは、もちろん携帯用ゲーム機だ。ただし、PSPではなくて初代ゲームボーイである。その後、ゲームギアPCエンジンGTと、徐々に入れるものが増えていった。その理由もランキングと同様で、MSX以外のゲーム機を買うことを親に禁じられていたからだ、当然、外付けの画面を買って隠す必要がある据え置き型のゲーム機は論外だ。
 一番大変だったのはPCエンジンGTで、反射光防止のためなのか、画面の縁のところに庇のようなものがついており、予想外にかさばる。ゲームボーイはデザインとしては平板で、GTに比べると場所を取らなかった。ただ、隠していたのは本体だけではなくACアダプタやソフトも含めてであり、引き出しはいつもギチギチだった。


ja.wikipedia.org


 その後引き出しに入れたのが、ランキングにはなかったがノートパソコンである。とはいえ、この時点でもインターネットはまだ一般的ではない。つまりこのノートパソコンはPC用ソフトを遊ぶためのものだった──といえば、なぜ引き出しにしまっていたかはお察しである。そういう意味では、そっち系の漫画や同人誌を引き出しにしまっていたのと方向性は似ているもしれない。ただ、当時のノートパソコンはゲームを遊ぶには適しておらず、画面は白黒の上に残像がひどく、サウンドボード用のPCカードを挿してBGMを出すだけでも非常に苦労させられた記憶がある。


akiba-pc.watch.impress.co.jp


 ところで、私自身は引き出しにはしまっていなかったが、こういう場面や黒歴史公開なんかで時折出てくる創作ノート──特にこの動画でも出てくるような、オリジナルポケモンの話とかが出てくると、ちょっともやもやする。
 私の弟もドラクエのオリジナル呪文一覧とかを作って私に見せてくれたことがあるが、私自身はそういうことをした記憶がほとんどない。というのは、当然ながら、TRPGというのはオリジナル創作ノートを趣味にしているようなものだからだ。鍵付き引き出しにしまうどころか、セッションメンバーにそれを開陳しているわけであり、オリジナルポケモンの設定と、TRPGでオリジナルのモンスターを出すのとどこが違うのかと言われると、苦笑いしつつもなかなか答えに窮してしまいそうだ。
 一応自分の中では、他人を楽しませるために設定を作っているか、それとも自分だけが楽しむために設定を作っているか、という線引きはあるつもりなのだが、言い方を変えれば、プレイヤーを楽しませようという観点がないオリジナル設定は黒歴史ノートと変わらないのではないかと、TRPGゲーマーとして自戒を込めてそう思うし、逆にいえば人に迷惑を掛けず自分で楽しむ分には、創作欲を発散するのも悪いことではないのではないだろうか。