ダブルムーン伝説の話(続き)・「14種の魔法」は少ないか?


 前回のダブルムーン伝説のエントリで「魔術師も司祭も魔法が14しかなく、少ない」と書いた。これについて補足しておきたい。例えばアリアンロッド1stエディションのメイジの魔法は、基本ルールブックでは総数で15。ダブルムーン伝説と1しか違わない。ではアリアンロッドの魔法も少ないか、というと……贔屓目を抜きにしても、それは当たらない。状況が違うからだ。
 ダブルムーン伝説の場合、魔術師系呪文は魔術師、魔法戦士、吟遊詩人、賢者が使用できる。仮にそのうち3クラスがパーティ内にいたとして、それぞれが初期段階で魔法を3つ習得できるため、全員が被らないように魔法を覚えたとすると、初期状態で全ての魔法のうち半分以上をフォローできてしまう。さらにレベルが上がると追加で呪文を覚えるので、レベル3でレパートリーが尽きる。*1経験値テーブルはレベル11まで用意されているのに、だ。
 これに対して、例に挙げたアリアンロッドの場合は、メイジは基本職かつルールブック内で他プレイヤーとの被りを推奨しておらず、さらにマルチクラスが標準なので、他のプレイヤーと被っていない総数30のリストの中から最初2、続けて1ずつ覚えていくことになる。このためレパートリーが尽きるのは相当先の話である。しかも、上級ルールでそれぞれのリストに大量の追加がある。
 つまり「マルチクラスも転職もできない」「基本クラスの中に実質上位互換の職業がある」「サプリメントでも魔法が追加されなかった」というトリプルパンチがキツいのである。
 加えて魔術師魔法、司祭魔法の大半が戦闘用の魔法で、なおかつ他プレイヤーを支援する魔法はほとんどない。アナライズもESPも、ヘイストもフライもないのだ。

 プレイヤーの一人がこう言った。「ダブルムーン伝説は、WARPSファンタジーから尖ったところを全部なくしたようなゲームだ」と。決断力チェックも抑制力チェックもなく、ヒーローポイントもない。その分、普通のゲームに近づいたように見える。
 逆に言えば、WARPSは戦闘以外で行き詰まった時に「実はそこにいた」「実は持っていた」「実は知っていた」で切り抜けることができたから、魔法は戦闘専用でよかった。しかし、ダブルムーン伝説ではそれはできない。と、ここまで来て前回書いた「判定システムが緻密でない」という弱点が繋がってくる。
 「キャラクター作成までしか遊んでいないのに……」と思われるかもしれないが、キャラクター作成まで行ったところで、プレイヤーも乗り気でなく、GMである私もセッションをどう進めていいのかわからなかったのだ。

 一応、添付シナリオでその辺りについて触れられていないかも確認したが、ダンジョンの最初の扉にいきなり鍵がかかっており、開けるには最大難度のD%判定に成功する必要があるのに、失敗した際のフォローは書かれていない。*2さらに、導入が「PCたちの前に別のパーティが事件解決に向かったが、消息を絶ったので調べてほしい」なのに、そのパーティがその後どうなったかどこにも触れられていないという、あの頃割とありがちだった「細かいところはGMが考えて」シナリオだったため、あまり参考にはならなかった記憶がある。

*1:ちなみに魔術師魔法にはレベル1のものと2のものがあるが、レベル2魔法を習得するのに何レベルが必要なのかはルールに記載されていない。Q&Aにも記載はないが、他のルールから類推すると、恐らくレベル3から。

*2:魔術師呪文、司祭呪文に「アンロック」はなく、魔法では開かない。