前回、テラ・ザ・ガンスリンガーについて語ったとなると、もう一つ、このゲームについて触れないわけにはいかないだろう。「天使大戦エンゼルギア」である。こちらも、テラ・ザ・ガンスリンガーとは違う意味で、天羅万象の精神的後継作といえる作品である。
この作品の概要は、一言で説明できてしまう。「TRPGであなたのエヴァンゲリオンを再現する」だ。といっても、エヴァのIPを利用したTRPGというのは他にもいくつかあるが、このエンゼルギアはそれらとは異なる。主人公はギアドライバーという名のエヴァパイロットで、シュネルギアという名のエヴァが登場し、天使という名の使徒が登場する。マスケンヴァル現象という名のセカンドインパクトまで出てくるが、それでもこれはエヴァではない。何故なら、この作品はエヴァの物語をトレースするのではなく、エヴァを見たファンたちの「私だったらこんなエヴァンゲリオンにするのに」「俺だったらこんなエピソードも描くのに」という願望を具現化するため、TRPGとして最適化された作品だからだ。
もし、IPとしての「エヴァンゲリオンのTRPG化」であれば、原作の設定を踏襲する必要がある。原作の設定は、そのままではTRPGには全く向かない。このエンゼルギアは、あくまでも「TRPGでエヴァンゲリオンみたいな話を再現する」という目的で作られているので、世界設定はTRPG向きになっている。例えば、天使と戦えるのはシュネルギアだけではない。ファルコンネン・マシーネン・ゾルダートという、いわゆる全身サイボーグも、それに匹敵する力を発揮することができる。そうでなければ、ギアドライバー以外シナリオに参加できなくなってしまうからだ。
そして、天羅でいうところの修羅、ブレカナでいえばマローダーに相当する、死ではない形でのPCのロストがあり、リミッターを超えるとPCは「天使化」してNPCになってしまう。この要素もエヴァには存在しない、TRPGならではの要素だといえるだろう。
プレイグループでのエンゼルギアに対する反応は、テラ・ザ・ガンスリンガーのそれとは対照的だった。テラは、何をやりたいゲームなのかを掴むのに長い時間がかかってしまった。これに対し、エンゼルギアはお約束のシナリオもやりやすかったし、プレイヤーもノリノリだった。さらに、単に天羅と同じ気合ロールがあるというだけではなく、それが最新のTRPG向けにブラッシュアップされており、セッションは非常にハンドリングしやすい。
しかし、遊んでいるとどうしても、逃れられない欠点が浮かび上がってきた。これは、エヴァンゲリオンみたいなTRPGを作ろうとした時点で不可避な事象だと思うが、PCやシナリオのバリエーションが非常に限られるのだ。世界設定の広がりも少なく、いくつかのパターンを網羅すると、後はみんなどこかで見たようなシナリオになってしまう。もちろん、このゲームはそんな「どこかで見たような話を楽しむ」ためのゲームではあるのだが、それにしても、だ。特に、PCのクラスが実質4つしかないのはかなり辛かった。
恐らく、このゲームは本来ショートキャンペーン向きのゲームだと思われるし、そんな中では比較的長めのキャンペーンを楽しんだ方だとは思っているが、それでもPCが成長していく楽しみというのはなかなか実感しづらい。非常に楽しいが、何度か遊ぶと行き詰まりを感じてしまう、そんなゲームだった。
その後、続編であるエンゼルギア2が発売され、こちらはPCのキャラクタークラスも増えたし、主役機であるシュネルギアのバリエーションも増えたので、以前よりシナリオが作りやすくなったと聞くが、間の悪いことに、私はこちらはプレイする機会に恵まれなかった。一度エンドレスサマーを使ってキャンペーンをやってみたかったが……残念だ。