奇貨

 しかし、この話にはオチがつく。私がこの第二版と第四版の齟齬を悲しんでいるか、憤っているかというとそうではない。逆である。
 私は、シャドウランというゲームにはあまりいい思い出がなく、ずっとトーキョーN◎VAというゲームをやり続けてきた。それについては詳しい事情はまたの機会に譲るが──当時、日本語版シャドウラン第二版の展開が停止したことで、サイバーパンクRPGを求めるプレイヤー層──“東京”を探し求めるプレイヤーたちが大量にトーキョーN◎VAに流れてきた。彼らの多くはロールプレイ重視派で、プレイスタイルもカッコよく、その中から生まれたライターさんの中には後にトーキョーN◎VA・R、そして後にDを牽引していくことになる人たちも含まれていた。もしシャドウランの日本語版展開が丁寧に、息長く続いていたのなら、彼らはN◎VAを訪れることはなく、ひいてはトーキョーN◎VAのサポートも終わっていたかもしれない。
 その意味では、シャドウランの熱心なファンの方には誠に申し訳ないが、シャドウランの展開がある意味で失敗してくれたからこそ今のN◎VAがあるともいえる。


 今回のロール&ロールに掲載されたシャドウラン第四版の記事は日本特集だった。やはり東京ソースブックを前提にした記述はない。(*2)それを読んでつらつらとそんなことを考えた次第である。


(*1)実は、違う次元でガープスも失敗をしている。ガープスは汎用TRPGと銘打っていながら、日本語版だけの環境では「普通のファンタジーRPG」がプレイできない。
 その理由は、日本独自の展開であるガープス・ルナルを本国サプリメントガープス・ファンタジーに替わるものとして発売したために、ファンタジー用のデータが存在しないからだ。普通のファンタジーRPGをプレイしようにも、ゴブリンやグリフォンなどの敵データが不明、デミヒューマンであるエルフのデータも設定がない(ルナルのエルファはいわゆるエルフとはかなりイメージが違い、データを流用するのは不可能だ。他についても同様である)。これでは普通のファンタジー世界では遊びようがない。


(*2)グレートドラゴン・リュウミョウについてと、日本帝国(JIS)の帝がシアワセ財閥から妻をもらったことが書かれているくらい。これらの情報は日本語版第二版の展開とはまったく関係なく、英語版の基本ルールブックに載っているレベルの情報である。