○○猛々しい

「日本メーカーはなぜ人の心を打つ製品を作れないのか」- 押井守監督と夏野剛氏のニコ生対談


 このタイトルで攻殻絡めて話するなら押井氏じゃなくて士郎正宗さん呼ぶのが筋だろ!!


 この対談者、まさか攻殻機動隊が原作物だって知らないとか? まさかね。まさかそこまで無知のまま対談に臨んだりはしないだろーとは思うんだが。ただ、本文中に士郎さんの士の字も出てこなかったり、「押井監督の代表作『攻殻機動隊』」とか思いっきり書いてあるのが気になるんだよねえ。攻殻の漫画版を読むことを勧めているけど、そこには押井氏の思想なんて一行も描かれてないよ? あれは士郎さんの作品なんだから。*1
 加えて、まるで「攻殻機動隊のテーマが警察である」のを押井氏が決めたかのような文脈になってる。原作者の立場はどこに……。ちなみにパトレイバーも押井氏が原作者に名を連ねているけど、警察をテーマにしたのはゆうきまさみさんだ。押井氏が原作を務めている作品で警察がテーマなのはケルベロスか。あと、スカイクロラで初めて軍隊にいった、って、自分が原作した「西武新宿戦線異状なし」は無視かよ……。

そんな押井監督からは、「攻殻機動隊」に関する驚きの裏設定が語られた。

押井監督:「素子は僕の設定では47、8歳。サイボーグだからね。本当は50代っていう設定だったんだけど、けっこう遠慮して47、8歳。でも現場の連中は20代でしょっていう。傭兵の少佐なんだから、20代とかありえないんだけど」

 これひっどいよなあ。ちょっと開いた口が塞がらない。

 まず、なんで人の作品の裏設定を勝手に語るのかって話なんだが。*2

 詳しくいうと、素子が年齢不詳、性別も不明であることは原作の第1話の最後で「女」をわざわざ「女型のサイボーグ」と言い換えていることから、原作者自身があえて不明にしていることは想像がつく。ただし、原作2巻の回想シーンなどをみると、サイボーグ手術前にも女性だったのではないか、ということはうっすらとわかる(2巻最終話で霊能局の環がアクセスしてきた時、意識下にある幼少時の素子らしき子供がちらりと映る)。
 年齢については、私も実は最初、作中の印象からなんとなく、素子は外見より実年齢がずっと上なんだろうと思っていた。しかしよく調べてみると、原作の舞台は1巻開始時点で2029年。幼少時に肉体を失ったと同じ2巻最終話に書かれていることから少なくとも10歳以下でサイボーグ手術を受けたと考えられる。押井氏がどういう根拠で47、8歳って言ってるのかわからないが、もしそれが正しいとすると、なんと1989年頃には手術を受けていないと計算が合わない。そっちの方がよっぽど「ありえない」だろ。*3

 ただ、一つだけ面白かったことがある。
 押井氏はインタビューの最後で「ニコニコ動画はいつまでもは続かない」と言ったらしい。しかし前にも書いたとおり、彼はアニメ業界だのゲーム業界だのの未来予測で思いっきり予想を外した前科がある。
 ということは、私もニコニコ動画はずっとは続かないと思っていたけど……もしかして、逆説的な意味でこれは長続きするお墨付きをもらったことになるんじゃないか?(笑)


※註・なお生放送を見れなかったので、今回のエントリはマイナビニュースの記事のみを読んだ感想であることをお断りしておきます。


攻殻機動隊 (1)    KCデラックス

攻殻機動隊 (1) KCデラックス

攻殻機動隊 (2)    KCデラックス

攻殻機動隊 (2) KCデラックス

*1:だから押井氏は「別に原作なんて読まなくていい」と反応してるんじゃないの? わからんが。

*2:ただこれ、押井氏も酷いけど、攻殻機動隊があたかも押井氏のオリジナル作品であるかのような形で文章に起こしてるライターも酷いんだよなあ。

*3:ただし、攻殻1巻は1991年発行なので、そこを考慮する必要はあるかもしれない。なお、同話欄外では「サイボーグは自分の実年齢に合った義体を使うか、若かった頃の自分に似た義体を使うかどちらか」と書かれている。たぶん読んでないんだろうなあ……。そりゃ士郎さんも「自分の作品は映像化に恵まれない」って言うわけだわ。むしろ、「現場の連中」の方がちゃんと原作を読んでいるのかも。でもこれ、素子の年齢が何歳かっていうのと日本のメーカーの製品の話と全然関係ないよね。