前に、私はけものフレンズ2もケムリクサも見ない、と書いた。解説動画を取り上げて、脚本を練る時間がなかったのかも、とも書いた。
そして、最新話の評判を耳にした。
とりあえず見てみることにした。そして最新話を視聴した感想として、前言を撤回する。
これは時間の問題ではない。脚本を書くセンスの問題だ。もし時間と金が湯水のようにあったとしても「未来のミライ」と同じことになるだけだろう。物語としての整合性がまるで取れていない。
檻を破壊できる力があるのに、助けが来るからとその場に座り込んで逃げ出さない主人公。詰問されているのに唐突に「それは仕事の依頼か」などとと言い出すフレンズ。俎上に挙げられているイエイヌとのやり取りなどは、その不整合の最たるものとして挙げられているだけで、他にも違和感がゴロゴロ転がっている。
また、前作と比べてしまうと、登場人物に誰も彼も他者への悪意がありすぎる。コノハ博士はカレーが食べたいからとサーバルを人質にしたりはしなかった。依頼だからと当人の意思を無視して他人を誘拐するフレンズなんて、前作の世界観では考えられない話だ。
つまりこれだ。
そのせいで、サーバルまで悪意を持っているように見えてしまう。
それと、脚本とは関係ない部分でもう一つ気になった。前作に比べて期間はともかく資金は投入されているはずの作品なのに、キャラの動きがなさすぎる。前作では、登場するフレンズが一人一人最低一箇所は該当する動物を思わせる動きを取っていたが、イエイヌに犬っぽい動きはまったく感じられなかった。他のフレンズも「みんなヒト」にしか見えない(その割にキュルルの動きは腕が細すぎるせいか年齢相応の子供のそれには全然見えなかったが……)。
最後の30秒だけは面白かった(見れば分かります)。
たつき監督とけものフレンズプロジェクトにどのような経緯があったのかは知らない。しかし、双方の人格はともかく才能は、こうして作品を並べられてしまうとその差がはっきりと見えてしまう。その意味では残酷だ。初見のハードルはやたら高いが、見れば見るほど引き込まれた前作に対し、今作は何も引き込まれるものがない。先週までのアンケート結果を見れば、今回のアンケート結果は、単にアンチが反対票を投じたというのに留まらない、2を信じようとしたファンたちすらも反対に転じるほどの何かがあったということを如実に示している。
9話といえば、前作ならキツネコンビが出てくる回だ。クライマックスに向けてまさに加速しようとしていた頃だ。それに対して今回は……残念としか言いようがない。