この発想はあった


 入れ替わりといえばとりあえずこれだよね……(笑)。

偉大なる伝説の始まり

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 私が遊んだのは多分MSX版だったと思うけど「剣がないと敵と戦えない」「指輪があると岩を動かせる」ということに気づくまで凄い時間が掛かった記憶があるわ……。そして、それを知ってなお、多分ステージ1もクリアできなかったはず……。
 しかし、それでも、この作品がなければザナドゥロマンシアソーサリアンも白き魔女も存在しなかったことを考えると、やはり偉大な作品なんだと思う。


コロコロ少年の思い出(10)

 ある日、D&DのネームレベルのPCの今後のキャンペーンをどうするかで盛り上がっていた時のこと。一人のプレイヤーが、持っていたボックスセットを取り出した。トラベラーの時と同じパターン……ではない。彼はルールブックを取り出してこう言ったのだ。
「これでGMやってくれない?」


Middle Earth Role Playing (Middle Earth Game Rules, Intermediate Fantasy Role Playing, Stock No. 8000)

Middle Earth Role Playing (Middle Earth Game Rules, Intermediate Fantasy Role Playing, Stock No. 8000)


 今思えば、初見で指輪物語RPG(以降MERP)のGMをやれというのは結構メチャクチャな話だが、MERPがどんなゲームか詳しく知らなかった私は、二つ返事で引き受けた。結局このゲームをやることになり、今回も、プレイヤーたちは思い思いにキャラクター作成を始める。ルールブックは一セットしかないので、取り合いながらである。
 私は、安請け合いしたもののルールの複雑さに泡を食い始めたところだった。ルールブックの持ち主である当の本人は、人のキャラクター作成に茶々を入れたり、合間合間にルールブックを眺めたりしていたが、やがて身を乗り出して聞いてきた。
「指輪のデータ、どこに載ってるんだろう」
 聞いていた全員が吹き出した。
 いやいやいや、このゲームは別に「黒の乗り手」やガラドリエルをプレイするゲームじゃないよ? というか、原作読んだんだよね?
 ここで「実は読んでないんだアッハッハ」ならそこで終わる話だが、そうではなかった。彼は原作を読んでいたのだ。
「姿を消すとかそういう能力なのかな? でもなんか影の世界に行けるとか」
 ちょっと待て、三つの指輪でもなく九つの指輪でもなく、一つの指輪を使うつもりだったのか? フロドになって滅びの山に指輪を捨てに行く話がやりたかったとか?
 そう聞くと、彼は被りを振った。
「いや、だって一つの指輪を手に入れたら、魔王のなんちゃらいう凄い力が使えるんでしょ? やってみたくない?」
 今度は全員が机に突っ伏した。まさか冥王サウロンをやるつもりだったとは!

 私は必死に説得した。このゲームはそういうゲームではない。雑誌記事から得た他にはその日初めて目にしたルールブックの知識しかないが、このゲームは「中つ国」の冒険者で遊ぶためのゲームであって、黒の乗り手になって好き放題するゲームではないし、エルロンドやガラドリエルをプレイするゲームでもないと。ましてサウロンでプレイするなんて絶対に無理だ、と。

 友人は素直に引き下がった。彼は回復の泉の水を皮袋に詰めて売りたがるようなプレイヤーだが、良い意味で物事にこだわらないという美点があった。
 ただ、最後に彼はポツリと言った。
「魔王、やってみたかったなー」

 一応断っておくと、なろう小説など影も形もない時期。ドラクエは三部作が出たかでないかの頃の話である。当時は笑いつつ呆れたが、この時代に魔王をやりたいと言った彼は、実は今思うと時代を先取りしすぎていたのかもしれない。
 しかし、彼がセッション会場にMERPの重い箱を持ってくることは二度となく、仲間内でMERPをプレイすることもこれ以降はなかったのである。