ゴジラとウルトラマン

 先日、西武園ゆうえんちに行ってきた。何かの作品やVtuberとコラボしているわけではない、普段の遊園地に行くのは随分久しぶりだ。


www.seibu-leisure.co.jp



 今回、西武園ゆうえんちを訪れたのは、前回ドラクエウォークのパ・リーグコラボの時に通りかかったにも関わらず、時間がなく訪れられなかったのが心残りだったからだ。「昭和レトロを再現している」とか「独自の通貨を使っている」とか、あちこちで広報されていたのと、前回通りかかった時にメインエントランスから中を覗き込んだくらいの予備知識しかなかった。
 そして実際に訪れてみたところ、事前に持っていたイメージとはちょっと違っていた。
 まず、エントランスから見えていた昭和レトロな商店街については、遊園地全体がそういう雰囲気なのかと思っていたが、案外そうでもない。昭和レトロな商店街が再現されているのは主に特定のエリアだった。



 遊園地全体が、入り口から左手方向に向けてすり鉢状に低くなっており、普通の遊園地に近いアトラクションはその凹んだところに広がっているから、入り口からは見えなかったようだ。独自の通貨も、今は使われていないようだ。

 とはいえ、前回寄った時中に入らず、今回改めて行き直したのはよかった。というのは、前回訪れた時はまだ開催されていなかった「ウルトラマン・ザ・ライド」というアトラクションが開催中だったからだ。時間帯によって旧来の「ゴジラ・ザ・ライド」と両方が楽しめるようになっている。


  


 入場料の5000円を高いと思うかどうかは人によると思うが、この2つのアトラクションには入場回数の制限などはない。もしウルトラマンライドに2回、ゴジラ・ザ・ライドに2回乗れば、1回当たりの費用は1200円程度。そう考えると決して高くはない気がする。
 ウルトラマン・ザ・ライドとゴジラ・ザ・ライドは、ディズニーランドでいえば「スター・ツアーズ」。富士急ハイランドにもエヴァとタイアップした似たようなアトラクションがあった。いわゆる大画面で映像を見せながら、座席にGがかかったり揺れたりするタイプのアトラクションだ。
 私が訪れた際には一日の前半がウルトラマン・ザ・ライドで、後半ゴジラ・ザ・ライドに切り替わった。
 実のところ、ウルトラマン・ザ・ライドについては、公式ページで公開されている動画で、1/3から1/4くらいは見ることができてしまう(リンクはネタバレを含むので折り畳み以降に)。
 ウルトラマン・ザ・ライドとゴジラ・ザ・ライドのどちらが面白かったかというと、個人的にはウルトラマン・ザ・ライドの方が面白かった。ウルトラマン・ザ・ライドの方が新しいようなので、当然といえば当然なのかもしれない。敢えていうなら、ウルトラマン・ザ・ライドの方は設定に違和感があって、ゴジラ・ザ・ライドの方は状況に違和感があるという感じだった。


(以下「ウルトラマン・ザ・ライド」と「ゴジラ・ザ・ライド」のネタバレを含むため念のため折り畳み)












あなたはウルトラ警備隊


 まず、ウルトラマン・ザ・ライドは「来場者はウルトラ警備隊の隊員であり、新兵器としてジェットパックが開発されたので、これを使って訓練を行う」という流れから、なし崩し的にゼットンとの実戦に巻き込まれるという流れだ。設定に違和感があるというのは、もちろん「実際のウルトラ警備隊にはこんな武器なかったよね」という話である。
 後は、横を向けば他の来場者が隣にいるのに、このジェットパックは隊員一人一人が飛んでいるという設定であり、状況的に映像内の登場人物は「自分」という「個人」に向かって話しかけてくるのは「?」となる。
 しかし、映像に関しては上の動画を見てもらえればわかるとおり、さすがに大迫力だ。ジェットパックを使い、昔のビル街の街並みの間をビュンビュン飛びながらくぐり抜けていくのは最高だった。むしろ、後半のクライマックスであるウルトラマンゼットンの方が、スケールが「巨大生物対巨大生物を俯瞰で見る構図」になってしまい、前半のようなワクワク感はなかった。

あなたは避難者

 では、ゴジラ・ザ・ライドの方はどうなのかというと、来場者は「たまたまキングギドラの襲来があった時に居合わせた、避難する市民」であり、装甲車で逃げるという設定だった。なので、来場者が複数居合わせるのには違和感はない。
 しかし見せ方の関係上、怪獣との距離が離れないという状況に違和感のある映像になってしまっている。ウルトラマン・ザ・ライドは「来場者はウルトラ警備隊の隊員」なので、怪獣がそこにいる以上、とどまって戦うというのは当然なのだが、「ゴジラキングギドラの戦いに巻き込まれた避難用の装甲車」が、怪獣に向かって突進するという状況はどう考えても無理がある。
 しかも、ウルトラマン・ザ・ライドが一応ゼットンを撃退してハッピーエンドなのに比べ、ゴジラ・ザ・ライドは「ゴジラキングギドラを倒してくれたおかげでほっと一安心」とはならず、最後にゴジラが来場者を見下ろして睨みつけるところで終わっている。「これはどう考えても次の瞬間死んでるだろ」というのも、映像作品として見るとどうなのかという感じがする。
 とはいえ、これは映画ではなくアトラクションなので、時間も限りがあるし、それほど目くじら立てて見るようなものではない。5分間アトラクションとして楽しめれば、それでいい話だ。
 ただ、このウルトラマン・ザ・ライドとゴジラ・ザ・ライドを見て思い出したことが2つある。

空飛ぶアイアンマンが好きだった


 このウルトラマン・ザ・ライドは昭和レトロというテーマだからウルトラマンをテーマにしているが、このビル街の間を飛ぶシーンには、むしろアイアンマンやスパイダーマンを想起した。
 最近、MCUの低調ぶりがあちこちで騒がれているけれど、私がアイアンマンやスパイダーマンを見るのに映画館まで赴いた動機の一つは、ストーリーだの登場人物だのではなく、「ニューヨークの街並みを猛スピードで飛んでいくアイアンマン」や「ビルとビルの間をウェブスイングで駆け抜けていくスパイダーマン」の主観視点の迫力の映像を、大スクリーンで見たかったからだ。そしてそれは、残念ながら今のMCUには見当たらない。どこかの知らない星の空や異次元ばかりを飛んでいるなら、わざわざ大スクリーンで見る必要性を感じないのだ。

かつて自分で操作できるゲームがあった


 そしてもう一つ。ウルトラマン・ザ・ライドを見ながら「自分で操作して動き、敵を攻撃したい」という欲求が止まなかった。それはつまり「星と翼のパラドクス」なわけだが。
 星と翼のパラドクスがゲームセンターで稼働していた頃、「500円で3プレイは高い」と言っていたプレイヤーがいたが、ウルトラマン・ザ・ライドのように迫力あるアトラクションが、ゲームセンターという身近な場所で、しかも、プレイヤー自身が自在に操作できるゲームとして遊べると考えたら、3回で500円は格安だったよな、と、今でもそんな風に思ってしまう。