この復刻シリーズも刊を重ねてきて、メジャーだったり、他社の既刊作品だったり、過去に他メディアに展開している作品の割合が減り、新刊の割合が増えているように感じる。私としては、初見の作品が多いのは楽しみだ。
今回5冊収録されているうち、復刻翻訳になるのは「さまよえる宇宙船」と「サソリ沼の迷路」の2冊だけで、後の3冊は日本語版としては完全新作になる。
一番注目していたのは表題作である「火吹山の魔法使いの伝説」だ。火吹山の魔法使いザゴールは、ファイティングファンタジーシリーズの最初の一冊で登場し、その後この日本語版復刻シリーズの記念すべき最初のタイトルも飾っている。最初タイトルを見た時は「もしかしてザゴールが火吹山に居を構える前の話か」と思ったのだが、あらすじに書かれているので明かしてしまうと、ザゴールが再び復活する話である。
ザゴールの最初の復活から今まで、期間としては決して短いというわけではないが、最初にザゴールに相まみえてから復活したザゴールに再会するまで日本語版にして30年かかったことを考えると、今回は「また復活したの!?」と思わなかったといえば嘘になる。
また、これも冒険だなと思ったのが、あらすじに書かれているとおり、舞台がアランシアではなくなっている。どういう理由で舞台が変わったのかはストーリーに関わるので書かないが、ファイティングファンタジーシリーズの1つの魅力である、荒々しくも懐かしいタイタン世界を再訪したい、というのが目的のプレイヤーがもしいたとしても、今作ではその思いは果たされないようだ。
ただ、それにも増して驚いたのが、この本は主人公を4人の中から選ぶ形になっていることだ。ソーサリーで戦士か魔法使いを選ぶというようなシステムはあったが、今回は4人全て種族も特性も名前もバラバラで、適用されるルールも異なるのに、一つのストーリーをなぞっていく。ファイティングファンタジーシリーズとしてはなかなか異色のアイディアだと思う。
また、タイタンを舞台とする作品としては「嵐のクリスタル」も一風変わっていて、アランシアの上空に浮かぶ浮遊島が舞台である。アランシアにそんなものがあったのか、という感じだが、こちらは今まで他にシリーズを手掛けたことのない新たな作者の手によるものだ。
そのせいか、表紙も大きな目をしたかわいいグリフォンのような動物を中心に、目の描かれた雲が配されたりしていて、殺伐としたタイタンの世界を舞台にした作品というよりは、なんだか絵本のような雰囲気を醸し出している。とはいえ、実際に遊んでみたらどのような雰囲気なのかはやってみないとわからないが。