スモールトークは為になる話が多いのだが、今回も首を縦にガクガク振りつつ同意。
私と私の仲間たちは、まさにこの情報収集判定のシステムが好きだったからこそ、トーキョーNOVAをずっとやっていたと言っても過言ではない。今まで何度も書いてきたけれど、私はGMの脳内当てゲームは嫌いだし、TRPGのセッションでプレイヤーにパズルを解かせるのも好きじゃない。そこで問われているのはプレイヤーの頭脳であって、PCの能力ではなくなってしまうからだ。
動画の中で鈴吹社長が「情報収集判定をシステムとして整理したことによって、自動販売機とかインスタントラーメンと揶揄された」と言っているが、この革新的なシステムに惚れ込んだ身からすると、むしろ情報収集判定を搭載していないゲームの方が理不尽に感じてしまう。
TRPGの戦闘シーンで、戦士のプレイヤーに向かって「君のPCは一体どんな風に両手剣を振り下ろしたの? どこを狙って? その理由は?」などといちいち聞いたり、魔法使いのプレイヤーに向かって「君のPCは一体どんな風に呪文を唱えたんだ?」と、いちいち詳細を聞き、その内容を呪文の効果に反映するGMはいないだろう。それは、戦闘のルールや魔法のルールがシステム化されているからだ。PCは戦士や魔法使いのプロなのだから、プレイヤーが詳細を説明しなくとも、当然PC自身の能力の許す限り最適な行動をとっているはずだ。なのに、情報収集という場面にだけそれが当てはまらないのは、どう考えても理屈が合わない。
情報収集判定においては、「どこの誰のところへ行って、どんな風に話を聞けばよいか」というのはPCが知っているはずのことであって、プレイヤーが知っている必要はない。だからプレイヤーが演出(説明)する必要はない。そこが画期的だった。
私が某ゲームの「交渉をダイスで判定するのは、TRPGの面白さをスポイルするもの」という意見に反対なのは、まさにこの動画で語られているのがその理由である。「ダイスで判定しない」ということは「情報収集をシステム化しない」ことに他ならない。
そして今回の動画で、前に推理物について書いた時と全く同じことが言われていて、思わず笑ってしまった。「話が進まなくて困るのはGM」なのだ。
最初の情報収集は「忍び足」
ただ、ちょっと動画と異なる意見を持つところもある。鈴吹社長は「ダンジョンズアンドドラゴンズの赤箱には情報収集のルールや技能はなかった」と言っているが、私はクラシックダンジョンズ&ドラゴンズの時代にも情報収集判定、そしてそれを表す技能はあったと思っている。もちろん、クトゥルフよりも前の話だ。
何かというと、シーフのムーブサイレントリー(忍び足)、それとヒアノイズ(聞き耳)の判定だ。これらはダンジョン内の情報を収集するためのシーフの特殊技能といってよい。つまり一番の黎明期には、情報収集というのはシーフというキャラクタークラスがほぼ一手に引き受けていたのだ。これに、マジックユーザーのインビジビリティやチャームパーソンのような「工夫すると情報収集に使える呪文」が加わることもある。もちろん、戦士などはこの情報収集に全く寄与することができないので、キャラクタークラス間の格差は非常に大きかった。
なぜそれで許されたかというと、ダンジョン内の情報収集はその他の行動と並行して行われる、あるいは戦闘と戦闘のインターバルに行われるもので、情報収集の場面で活躍できなくても、他に活躍シーンがふんだんに約束されていたからだ。
しかし、これがシティアドベンチャーとなると、本来戦闘と戦闘の合間にあった情報収集が大きくクローズアップされて、戦闘シーンの比率が減る。結果、戦闘しかできないというキャラクターが活躍するシーンが少なくなってしまうので、トーキョーNOVAのような工夫が凝らされたゲームが誕生したのだと思う。
情報収集判定の導入によって、セッション中に行き詰まるという場面は格段に減った。これは非常に画期的な発明だった。そのノウハウは、後に出たタイトルでも生かすことができた。これが、私がトーキョーNOVAというゲームに感謝している点の一つである。