自分もうろ覚えなのであまり自信持って言えないんだけど、バスタードのいきなりべノンは、コメントでも指摘してる人がいるように、詠唱時間を省略したというよりは漫画上の演出の一つだったように思う。作中に登場する本当の無詠唱魔法は、Ωアビゲイルのビーム砲のように、科学技術がもたらした兵器の産物だった、という世界設定だったはずだ。……少なくとも初期の頃は。
スレイヤーズについてはそれほど読み込んでなかったので細かいことは分からないが、TRPGゲーマー的に、ガープスについて語ってみる。
ルールブックを見直したところ、確かに基本ルールの段階で、技能レベルを上昇させることによって詠唱時間をゼロにできるというルールがある。とはいえ、そのルールの知名度から考えるとそれが今に繋がっているとはちょっと考えづらい。単に「一番古いのは」というのではなく「元ネタは」というのであれば、やはりスレイヤーズなのかもしれない。
ところで、TRPGで魔法使いの詠唱を省略できるというゲームはそれほど多くない。この「詠唱を省略できるかどうか」……というより、そもそも「魔法の行使に詠唱が必要である」と明記されているかどうか、というのは、「魔法の行使を沈黙の呪文によって無効化できるか」と裏腹の関係にある。もしダンジョンズアンドドラゴンズにこのルールがあったら、詠唱が不要になれば、沈黙の呪文を使っても魔法が使えてしまうということになる。
そしてもう1つは、詠唱をゼロにすることによるゲーム的なメリットがあるかどうかという話だ。多くのゲームでは「詠唱に時間がかかるので発動が遅くなる」というのをルール的に再現していない。ダンジョンズアンドドラゴンズの魔法の発動はラウンドの最後になるが、これが呪文に必要な身振り手振りのせいなのか、詠唱しているせいなのかは、ルールブックには明記されていない。
むしろTRPGのルール上問題になるのは、この身振り手振りが必要だという部分の方で、このために「手を開けていなければならない」とか、「金属製の鎧が着れない」とか装備に制限が加わるケースがある。ダンジョンズアンドドラゴンズもそうだし、ソードワールドもそうだ。これに対し、ほとんどのゲームでは、詠唱そのものをしているという演出はあっても、それが長いか短いかによってメリットやデメリットは生じていない。
……実は、今回のまとめに最も近いルールを持つTRPGは、ファンタジーTRPGではなく、スチームパンクTRPGである。それが「ギア・アンティーク」の「アート・アルケミー」だ。このサプリメントには魔法を1からカスタマイズするルールが掲載されているが、その中に「詠唱を長くすればするほど魔法の難易度が下がり、威力が上がる」というものがある。逆に言えば、短くすればするほど発動の難易度が上がり、魔法の威力が下がる。従って、即時発動なのにそれなりの威力がある、というのは高位の魔法使いの証となるのだ。

