ブレカナを遊ぶならどの時代?


 さて、今回はふぃあ通動画の前半、シャドウオブアビスの話だ。購入した時の印象はもう書いているので、今回は動画の内容を踏まえて続きを書こうと思う。
 私が気になっていたのは、旧版で「エピックプレイ」と呼ばれていた「複数の年代にまたがったセッションを行った時のルールの処理」について。新版ではちょっと違う扱いになる、と社長が言っていたような記憶があったのだけれども、サプリメントの内容と今回の動画の内容を合わせて考えると、旧版のようにルールでかっちり取り扱いを決めてしまうのではなく、ある程度曖昧に運用するのが今回の方針だということなのだろう。



 ブレイド・オブ・アルカナにおける「複数の時代にまたがったキャンペーンの進行方法」について、個人的な意見はまた別の機会に書くとして……その状況を踏まえた上で、では、一体いつの時代で遊べば良いのか? 今回のシャドウ・オブ・アビスで、ハイデルランド暦1060年から1070年までの設定が改めて整理され、特殊因果律が用意され、セッションができるようになった。しかし、例えばブレカナを初めて遊ぼうとする人や、ロールアンドロールを見て初めてブレカナを知った人は、何年を舞台にシナリオを作れば良いのだろう、と思うかもしれない。
 なので、以下は完全に個人の主観であることをお断りした上で、私はどう考えているか、というのを書く。
 なお、これから書くことはGM向けの、かつて秘密だった情報を含むため、GMをする予定のない方向けに、一応折り畳む。












キャンペーンに向いているのはどの時代?

 どの時代でブレカナのシナリオを作成するか、というのは、3つのタイプがあると思っている。

1060年のハイデルランド

 まず、私のようなゲームマスターからすると、シナリオが一番作りやすいのは初版及び第2版の舞台となる1060年だ。この時代は全ての特殊因果律が解決しておらず、あらゆる問題が未解決の状態で放置されている。従って、単純にネタが一番転がっているのは1060年だ。どこを拾っても、誰を取り上げてもシナリオになる。
 ただし、1つ条件がある。実は初版の時「秘密結社セプテントリオンの首領リヒャルトシュヴァルツが弟子に送った書簡」という形で、ある設定が明かされている。それに基づけば1060年当時のハイデルランドの要人の大半が、PC達刻まれし者と敵対する殺戮者だ。
 ハイデルランド王国のマルガレーテ王妃は魔神パラモルと繋がっており、対抗するブレダ王国の国王ガイリングも魔竜ロヴレンドと密約を結んだ殺戮者である。国王ヘルマン1世麾下の傭兵伯ゲオルグ・シュローダーも邪剣カーネイジを携えた殺戮者。彼によって森を滅ぼされたエルフ、ディアスポラのアルダも伝染病を使って復讐を企む殺戮者。そしてそのゲオルグからカーネイジを受け継いでしまった、ノエル・フランシス・エルマーも殺戮者だ。付け加えるなら、依頼者としてよく使われる聖グラウディシア騎士団も、その創始者サイモン・ブラックからして極めて狡猾な殺戮者である。
 つまりPCから見ると周りは敵だらけであり、信用できる相手は竜伯リザベート・バーマイスターぐらいしかいない、という四面楚歌の状態である。だからこそシナリオのネタに困らないのだが、依頼者にあたる者たちまでが、ここまで完全に敵に回るTRPGというのもあまり多くないのではないか、と思う。例えば、世界観的には似通っているアリアンロッドのアルディオン大陸、あるいは他社のゲームでソード・ワールド2.5に登場する領主たちは、もちろんここまで明確にPC達の敵となる存在ではない。
 ルールブックにあるとおり、ハイデルランドの夜は暗い。PC達の行く道も例外ではなく、行く手のほとんどあらゆるものに魔神の息がかかっており、そこかしこに殺戮者が跋扈している。それが1060年である。
 ただこれは、他のゲームに慣れている人や、もう少し緩くプレイしたい人には、少々息苦しい世界かもしれない。知り合ったNPCも誰も彼もみんな信用できないとなると、いささか疲弊するプレイヤーもいるだろう。

1070年のハイデルランド

 そう感じるセッショングループの場合は、シナリオの舞台を1070年にすることをお勧めする。この時代には、1060年から山積していた問題のいくつかが(PC達を想定した「刻まれし者たち」の手によって)解決されている。妄執の老王ヘルマンはすでに崩御しており、開明的な新女王、ヒルデガルドが戴冠している。10年間で起こった王位継承を巡る大きな戦いも、既に決着している。
 従って、ゲームマスターから見るとシナリオのネタが減っているが、視点を変えれば、ハイデルランドの闇を司っていた人物の多くが表舞台を退いており、名のある者がどいつもこいつも敵である、という時代は終わっている。ある意味で他のTRPGに近いような、少し静穏な世界設定で遊ぶことができる(残念ながら魔神の大半は健在だが)。
 象徴的な例が選帝侯の1人、クリューガー家である。1060年当時の当主はフェリックス・クリューガーという人物で、殺戮者として聖痕を集めすぎたために、もはや人の形すら保つことができず、異形の存在と化しているとすら言われていた。それが10年間の間に代替わりし、後継者であるリエッタ・クリューガーは闊達で聡明な少女である。事情を知る人間からすると「あのフェリックスとこのリエッタがどうやったら繋がるんだ」という感じなのだが、少なくともリエッタには裏の設定はないようだ。……少なくとも、今のところは。
 1070年になっても、相変わらずハイデルランドの夜は暗いものの、薄明かりが差し始めた時代だと言えるだろう。

1061年から1069年のハイデルランド

 では、1060年と1070年の間の時代はどうかというと、これはキャンペーンあるいはシナリオで使おうとしている特殊因果律による。
 例えば、神聖バルヴィエステ帝国の皇帝アンゼル1世などは、1060年には注目されておらず、1070年には討伐されている。彼に関する特殊因果律を使うのであれば、それに適した年代を設定するべきだ。
 大きなイベントでいうと、ハイデルランド王国とブレダ王国の共闘による北伐やハイデルランドの新たな後継者を決める三王会戦、あるいはヘルマンの命運を決めた黄金の杯(ポカール)。これらを題材にするのであれば、それが発生した年代をキャンペーンの舞台にするしかない(ちなみに北伐についてはバッドエンドで終わるので、その点を踏まえた上でキャンペーンを作成する必要がある)。

まとめ

 基本的に「どの特殊因果律をシナリオで使用したいか」によって舞台となる時代は変わるが、もし、それを気にしないのであれば、シナリオのネタが多い代わりに雰囲気が暗いのが1060年で、シナリオのネタは減っているが多少明るい雰囲気になっているのが1070年だと私は思っている。どちらの時代を選ぶかは、セッショングループの傾向次第だろう。