昨日の補足


 さて、昨日のエントリの続きというか、補足を書いていこうと思う。「ブレカナは殺戮者を倒す以外できないゲームかどうか」の話である。以前はロールアンドロールのバックナンバーに掲載されたシナリオや、発売されたリプレイをブレカナのフォーマットで再現しようとするとどうなるか、という観点からエントリを書いたが、今回は実際に人から聞いたり、ネットで目にした言説を元に書いていこう。

Q.「シナリオの最後が必ず人間同士の戦いとなるのが嫌。相対した敵を倒すべきかどうか、毎回悩みたくない」

 実はブレイドオブアルカナには、敵専用の種族が存在する。「オーク」と「ラガルート」そして「ヴァルフェー」である。ラガルートというと分かりづらいが、これはいわゆる「リザードマン」、トカゲ人間のことだ。人間と人間の戦いではなく、人間とモンスターが戦うシナリオをプレイしたい人は、オークかラガルートの殺戮者を配下と共に登場させれば良いだろう。*1キャラクターの作り方としては、アルカナのうち1枚をフルキフェルにする他は、普通の殺戮者を作るのと同じである。


 いや、そもそも人間だけではなく、人間型の敵ばかりなのが飽きる、というのであれば、ルールブックには非人間型の殺戮者も登場している。火龍ロヴレンドなどがそれだ。ロヴレンドはドラゴンでありながら殺戮者である。また黄金竜ベイレムーヴァも、ドラゴンでありながら魔神でもある。従って、いわゆる非人間型のモンスターを殺戮者として設定するシナリオも作成できる。例を挙げるなら、ロードス島戦記で、火竜シューティングスターが麓の村を襲うシーンなどが悪徳に当たると考えれば良い。
 もっとも、ルールブックには「クリーチャー」と呼ばれる、普通のゲームでいう「モンスター」が掲載されてはいる。しかし、これらをそのまま、シナリオに登場する殺戮者の「代わり」、いわゆる「最後の敵」として使うのはお勧めできない。何故なら、ブレカナは「殺戮者」を登場させ、終局ステージで「聖痕の解放」を行うことが、ゲームバランスに組み込まれているからだ。これらのクリーチャーは、恐らく殺戮者の添え物として登場させることが想定されている存在である。
 では、そういった非人間型モンスターそのものの殺戮者はどのように作れば良いかというと、現在のアルカナをエルスにして、スキル「守護神」を持たせたキャラクターを作成すればよい。これによって、主人なしで「使い魔」が主体となって動く、爪や牙を主な武器とする「モンスター」の殺戮者を作成することができる。

Q.では、ブレイドオブアルカナで、D&Dのようなダンジョンシナリオをプレイすることはできるのか?

 この質問に答えるのは難しい。ブレイドオブアルカナは、最後に殺戮者を登場させ、これを倒すという流れがほぼ必須なゲームである。このため、何かのアイテムを取ってくることを最後の目的とするシナリオ、例えばウィザードリィの「リルガミンの宝珠」のようなシナリオや、どこかを踏破したり、目的地に着くのが目的のシナリオの場合、一捻りして、最後の障害として殺戮者が立ちはだかる形式にしないと、物語としての収まりが悪くなる。
 とはいえ、TRPGにおいて盛り上がる代表的なポイントが戦闘である以上、これらは他のゲームをやった場合でも、似たような展開になる可能性が高い。

 本当に「(アリアンロッドのような他のゲームではできるが)ブレカナではやりにくいタイプのシナリオ」というのは、「小規模、あるいは中規模の戦闘を相当回数こなす」というシナリオである。
 ブレイドオブアルカナは「PC側の重要なリソース(「奇跡」)が一人当たり1シナリオに3回」と決められており、なおかつ「シナリオのクライマックスに登場する殺戮者が、PCに比べてはるかに強い」という設定であるため、プレイヤーとしてはリソースを小出しにしづらい。また、「奇跡」を使うたびに、結果的にDPが減るリスクが存在するというのも、メリハリの少ない中規模の戦闘を幾度も繰り返すというプレイスタイルとは相性がよくない。
 ブレカナの戦闘は、回数は少なく、その代わり強大な相手と戦うということが想定されている。そういう意味では、舞台が地下迷宮であることは問題ないが、玄室の扉を開けるたびに敵が出てくるようなシナリオは、比較的向かないかもしれない。

 ただ、この一点は断っておきたいのだが、ブレカナの殺戮者は、常にPCと強力な因縁があったり、邪悪で遠大な目的を秘めている必要があるわけではない。私もこれは長らく勘違いしていたのだが、そういった殺戮者の方が登場頻度が高いというだけだ。
 例えば、「ハイデルランド英雄譚」の「まことの騎士」に登場する殺戮者などは、単なる通りすがりの傭兵である。雇われてPCを討つ立場になったというだけで、シナリオ開始前にはPCとの特別な因縁はない(もちろんセッション中にはやり取りはあるが)。
 つまり、これと前項を組み合わせると「今回のシナリオの殺戮者は、通りすがりのオークの盗賊団の頭目」という導入も、「今回のシナリオは隣町へ向かう街道上に棲みついたマンティコア(エルス)の討伐任務」なんていう導入も、ブレカナの世界観としては全然問題ないわけだ。そう考えると、ブレカナのシナリオを作るハードルは別に高くないのでは、というのが私の印象である。


*1:ヴァルフェーはいわゆる「ワルキューレ」のことで、姿形は人間な上に、搦手を好み、直接斬り合うような状況にはなりづらい相手なので、ここでは除外する。