「クロマク」の歴史


 今回の動画というか、今度追加されるという「ミギウデ」というスタイルは、トーキョーNOVAを昔からやっていた人間からすると、結構なパラダイムシフトとなるスタイルになりそうな気がしてきた。オルタナティブサイトで追加されたコモンと似たような印象だ。恐らく一番影響を受けそうな、重要なスタイルが「クロマク」である。



 今回の話をするにあたり、クロマクというスタイルの変遷を語らないと理解しづらいと思うので、順番に書いていこう。
 クロマクというスタイルは、トーキョーNOVAの初版から存在するスタイルである。前に書いたように、トーキョーNOVAの初版においては、神業と特殊技能が区別されていなかった。クロマクは特殊技能を持たず、代わりに強力な能力を持つタイプのスタイルだった。その能力が「影武者」である(「腹心」ではない)。名前は違うものの、その効果は最新版のクロマクが持つ腹心(ライトハンド)の能力に似ている。「クロマクの意向に忠実に従うゲストがいる」という能力である。このゲストがクロマクのスタイル枚数分だけ存在する。クロマク3枚であれば、部下が3人いるということになる。
 「この能力で名称が『影武者』?」と思うかもしれないが、オプションルールとして「この忠実な部下は、スタイルのうち1枚を「カゲムシャ」というスタイルにしても良い」となっている。このスタイルは「主人であるクロマクに瓜二つである」という以外の能力は全く持たない。そして、クロマクは何か都合が悪いことが起きた時に「それは影武者の身に起きたことだ」といって悪い結果を押し付けることができ、逆に良いことが起きた時に「それは実は本物の私だったんだ」といって自分の功績にすることができる。
 最新のトーキョーNOVAに慣れている人からすると、違和感を覚えるかもしれない。この当時のクロマクの能力は、今でいうところのクロマクの「腹心(ライトハンド)」の神業と、マイナスナンバー・カゲムシャの「進出鬼没(チェンジ)」の神業を併せ持ったような能力である。しかも驚くべきことに、この能力には(入れ替わりの)回数制限がない。スタイルの枚数が影響するのはあくまでも部下の人数だ。もちろん、影武者が命を落とすような事態であれば、それ以上入れ替わることはできなくなるだろうが。この能力は、セカンドエディションになっても基本的にほとんど変更がなかった。



 最初の変更が加わったのは、姉妹作のオーサカMOONである。この作品において、カゲムシャはクロマクとは別個の、独立したスタイルとなった。
 最も大きな変更点は、初版やセカンドエディションだと、クロマクとカゲムシャが入れ替わるのはあくまでもクロマクの意志によるものだった、という点だ。それが、オーサカMOON、そしてレボリューションになるにあたり、「腹心の部下がいる」という能力と「カゲムシャとクロマクが入れ替わる」というのは別の能力として整理され、入れ替わる方はあくまでもカゲムシャの宣言によって入れ替わると変更された。
 さらに、初版の「カゲムシャは決してクロマクを裏切らない」という記述が、レボリューションで削除された。クロマクの「腹心」の神業は、同じ神業によって無効化される可能性がある。実際、著名なNPCがカゲムシャに裏切られて抹殺され、入れ替わられたという有名なエピソードも存在する。

 ただしこの時点においても、「個人に忠誠を誓う」というキャラクターは、忠誠を誓う側のスタイルによるものではなく、忠誠を誓われる側、つまりメリットを受ける側がリソースを支払うもの、という形で方向性としては一貫していた。
 この点、動画でも言及されているように、クグツも確かに「仕える者」であるが、基本的には相手は組織であるため「忠誠を誓われることによってメリットを受ける個人」は存在しない。あくまでもキャラクターレベルでは、メリットを享受する側がスタイルを持つべき、という図式は変わっていない。



 これと対照的なシステムを持つのがブレイドオブアルカナだ。ブレイドオブアルカナの「ステラ」は、英雄の介添人。つまりサポートする側としてのアルカナであり、サポートされる側のアルカナではない。ちょうどトーキョーNOVAでいうところの「クロマク」と、関係性が逆転している。
 理由は名言されたわけではないが、推測はできる。1つは、トーキョーNOVAとブレイドオブアルカナというゲームの差別化を図るために、似たようなスタイルに対して逆のアプローチを採ったのではないか、というもの。
 もう一つは、ブレイドオブアルカナにはトーキョーNOVAには存在しない「エルス」と「ディアボルス」というアルカナが存在したためだ。エルスは「自分に忠実な使い魔を持つ」というアルカナである。部下ではないが、クロマクに似た印象のアルカナだ。もう一つのディアボルスは「意志を持つ魔剣を所持する」というアルカナで、これも魔剣そのものを部下のバリエーションと考えると、クロマクと似た位置付けのアルカナということになる。
 トーキョーNOVAでクロマクのキャストをセッションに参加させようと思うと、部下となるゲストもセッションに参加させねばならず、カードなどのリソースの処理が非常にややこしいことになる。ブレイドオブアルカナはこの反省を生かし、簡略化されたデータフォーマットを持つ「使い魔」や「魔剣」といった存在がPCに仕えるという形のアルカナにしたのではないか、というのが私の推測だ。



 トーキョーNOVAに話を戻すと、初版からオーサカMOON、そしてレボリューションになるにつれ、少しずつ変わっていった「クロマク」の「腹心(ライトハンド)」という概念に、ここでまた一石が投じられることになると思われる。なぜなら、クロマクの「ライトハンド」は、あくまでも「忠実な部下を持つ」というクロマク側に主体のあるスタイルであって、今回追加される「ミギウデ」は、その部下自身に主体がある。
 仕える側と仕えられる側、両方がミギウデとクロマクを持つ場合、片方がミギウデ、もしくはクロマクしか持っていない場合、またそれぞれがキャストの場合、ゲストの場合、扱いはどのように変わるのか。それぞれが使える特殊技能という観点からドライに割り切るという考え方もあるだろうが、実際それぞれのパターンによって、セッションの進行に影響を与えるような違いはあるのだろうか。
 ゲストにしてルーラー預かりになった場合、リソースはどうなるのか、ミギウデかつカゲムシャだった場合、チェンジしたらどうなるのかとか、そのあたりも恐らく、サプリメントの中でフォローがされるのだろう、と思う。