5版ってそんなに売れてたんだ……。ちなみに、AD&D1版の頃はライバルTRPGはほとんどいないか生まれたばかりだったので、周辺状況から考えると5版の売り上げは驚異だと思う。3版から4版への変更点が多く、かつ劇的過ぎたものを、3版と4版のいいとこ取りをしたっぽいのが受けたんじゃないだろうか。
ちなみに「1版ってCD&Dかな?」という疑問に「AD&Dです」という短い反応しかしかなかったけれど、これだと分からない人も多いんじゃないかな……。
という訳で、補足の説明を。過去のエントリと内容の被る部分もあるかもしれないがご容赦願いたい。
世界最古のファンタジーTRPG、ダンジョンズアンドドラゴンズ(D&D)は、アメリカでゲイリー・ガイギャックス達によって製作された後、初心者向けのD&Dと、上級者向けのアドバンスド・ダンジョンズアンドドラゴンズ(AD&D)の2系統に分化した。ちなみに、ここでいう初心者向けのD&Dをクラシック・ダンジョンズアンドドラゴンズ(CD&D)と呼ぶのは、AD&Dの3版で初心者向けを吸収する形で2つの系統が統合されたからだ。つまりAD&Dの3版とはD&Dの3版と呼ばれるもののことなので、旧来の初心者向けD&Dを区別する必要が出てきたために、便宜上CD&Dと呼ぶようになっている。発売時の製品名として「クラシック・ダンジョンズアンドドラゴンズ」という名称のTRPGは存在しない。
よって、CD&D及び3版以降のD&Dを除いたとしても、本国には「AD&Dと分化する前のD&D」が存在する。ただ、こちらはやはり系譜としては後のAD&Dに近いものだという。とはいえこちらの無印D&Dは激レアな代物であり、本国ですら今市場に出回ることはほぼないだろう。かつて輸入中古TRPGを精力的に扱っていた頃のイエローサブマリンですら、この世代のD&D関連商品は見かけたことすらない。日本に入ってくることもほとんどなかったのではないだろうか。
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(英語版ウィキペディアに初版の表紙画像がある)
そして、上のまとめの一番左にある、歴代で2番目に売れたAD&Dの初版。こちらはサプリメントも含め、出版点数は多かったものの、日本には縁遠いタイトルだった。日本語訳されなかったからだ。
前に株式会社新和が手掛けていた頃のD&Dとサポート雑誌について書いたことがあるが、その最初の1冊である赤い表紙のドラゴンマガジンの第1号から(富士見書房のものとは別物)、このシリーズは「和訳発売済みのCD&Dシリーズのサポート誌」であると同時に「未訳のAD&Dの紹介雑誌」だった。
英語が読めない読者としては散々期待を煽られたわけだが、結局AD&Dの1版は和訳されなかった。和訳がスタートした時点で本国では2版が出ており、それが翻訳されたからだ。
内容としては、3版から4版のような大変更はもちろん、2版から3版ほどの変更もなかった、いわばマイナーチェンジバージョンだった、らしい。しかし、1版で人気の高かったメジャーなモンスターのデータブック「ディティーズアンドデミゴッズ」や「フィーンドフォリオ」(有名なバハムートやティアマットはみんなこの辺)、プレイングガイドにあたる「ダンジョネアスサバイバルガイド」「ワイルダネスサバイバルガイド」のような評判の高いサプリメントは、軒並み使えなくなった。
これは、日本語版AD&Dが不振だった理由の一つだと私は思う。3版から4版の時にも同じことが起きたが、豊富なサプリメント群の翻訳が期待できなくなり、本国ですら未発売のサプリメントが出るのをひたすら待つことしかできなくなったからだ。
まとめると、AD&Dの初版は、長らく本国で最も遊ばれたD&Dであったが、不幸なことに日本語環境で遊ぶことは最後までできなかった。言い換えると、5版の販売数が初版を超えた時、初めて「本国で一番遊ばれているD&Dが、日本語でも遊べる」環境になったといえるだろう。