偵察したい?

 では、反対にプレイヤーの側から「敵を偵察したいのだが」という提案をされたことがあるか、というと、2回だけ経験がある。一つは天羅万象、もう一つはカオスフレアだった。
 えっ? と思う方もいるかもしれない。特に天羅万象については、まともに隠密行動を行う能力など存在しないゲームだ。
 私も真意を図りかねてプレイヤーに聞いたところ、こういう答えが返ってきた。


「敵状を偵察にいけばたぶん見つかって敵に捕まるだろう。そうすれば敵のボスと煮えロールプレイして気合ロールができる/フレアがもらえるから」
 

 この台詞は、別々のグループの別々のプレイヤーから発せられた台詞である。二人のプレイヤーがまったく違う状況で、気合/フレアを手に入れるために同じ手段を使う発想に至ったというのがなかなか面白かった。


 ちなみにこれ以外では、敵の様子を見るために相手の砦を観察して知覚判定をする、などの状況を除けば、敵を偵察したいという提案がプレイヤーからされた経験はほとんど記憶にない。これは、私がプレイしているゲームタイトルにも関係がある。例えばトーキョーNOVAであれば「偵察するくらいならニューロの一人も雇え」という話になるだろう。
 またFEARゲームの多くは隠密行動スキルの能力をPTメンバーに及ぼすことができない上に、GMが制限することさえなければ登場判定によって特定のPCが登場しているシーンに後から登場することが可能であるため、PT全体で隠密偵察活動を行うメリットそのものがあまりないせいもあるかもしれない。実際アリアンロッドリプレイ・ブレイクの最新刊でも城への侵入シーンでプレイヤーが似たような会話をかわしているシーンがある。

 ずっと昔のゲームでいえば、クラシックD&Dなどはほとんどの敵より荷物を持って鎧を着込んだ戦士の方が移動速度が遅く、敵の移動速度を落としたりこちらの移動力を上げる能力がマジックユーザーくらいにしかないのに加えて、ガゼッタの技能ルール未採用の環境だと相手から身を隠すことができる能力がシーフにしかない)ため、まともに追いかけっこもできないことから、プレイヤーから偵察が提案されることがなかったのだろう(というか、怖くてできない)。どちらかといえばD&Dロードス島戦記のようなクラスシステム制のゲームより、RQなどのスキルシステム制のゲームの方が、隠密行動の判定にPC全員がチャレンジできるという意味では偵察任務には向いている。
 あと印象に残っているのはクリスタニアRPGだ。スカウトという隠密活動向きのクラスはあるが、それよりビーストマスターのタレントによる能力の方が回数制限はあるものの強力であり、特定のビーストマスターのタレントの隠密能力が猛威を振るっていた。しかしそれはもちろん、PC全員に開放されている能力ではなかった(GMが特定の神獣に仕えるビーストマスターだけをPCにするよう、キャラクター作成の段階で制限を掛けない限りは)。
「守護神獣に変身して、動物のふりして敵陣に侵入します。警戒されませんよね?」と宣言したプレイヤーもいたが、クリスタニアの世界で守護神獣が人間より警戒されないわけがないだろう、と却下したこともある(笑)。


クリスタニアRPG (fukkan .com―ブッキングTRPGシリーズ)