一ヶ月生殺しか……

Role&Roll Vol.150

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Role&Roll Vol.151

Role&Roll Vol.151


 先月号の「なぜなに未来侵略」のコーナーで、珍しく執筆者の小太刀氏に賛同できない意見があった。「前提変換」の話である。
 読んでいない方のために説明すると、例として挙がっているのは「足がかりのない崖をよじ登る、『肉体』難易度20」という判定があったとして、プレイヤーが「自分はアイゼンを持っているので足がかりがあるはず」とか「前に登った人間がロープをたらして他の人間はそれを使って登る」と言った時、達成値に+2、あるいは難易度を10として判定を有利にする、というのを、記事内では「前提変換」としている。
 もちろん、記事のなかでは「きりがないので際限なく認めないように」とか「誰がGMかわからなくなるような、勝手に結果を宣言するような判定は認めるな」とか、ストッパーは幾つもかかってはいるのだが……。


 今の私だったら、これらの前提変換は一切認めない。


 記憶力のいい人は「あれ? 前に『“すり抜け”でボーナスつけるのは望ましい』とか言ってなかったっけ?」と思うかもしれない。そのとおり。状況が変わったので認められなくなったのだ。


 理由は言うまでもないことだが「朝霧カフカやらその眷属やらが暴れまくったから」である。


 私が前に書いた「すり抜けでボーナス〜」は、GMとプレイヤー双方が善意に基づいたプレイングをすることを前提にしている。相手の裏を掻くような、自分の知識を自慢するようなプレイヤーがセッションに参加することは前提にしていない。こういったプレイヤーが混じっていると、プレイヤーの提案にボーナスを認めるのが非常にリスキーになるのだ。小太刀氏が述べているように「最終的にセッションを乗っ取られる」からである。
 もちろん、私自身は幸いにしてコンベンションでそのようなプレイヤーに遭遇したことはない(目撃談は聞いたことがある)。そして、遭遇する可能性そのものは決して高くないと思っている。TRPGの性質上、そういったプレイヤーは一部の例外を除いて淘汰されていくからだ。*1もっと言えば、コンベンションならクトゥルフパラノイアログホライズンなど特定のタイトルを避けるようにすれば、遭遇確率はさらに下がる。


 とはいえ、確率がゼロでない以上、リスクは避けたい。また、プレイヤーの提案を際限なく認めていくと、普通のプレイヤーをそういったモンスタープレイヤーに育ててしまう可能性もある。
 誤解のないように付け加えておくと、私はプレイヤーの宣言を却下はしない。ボーナスをつけないだけだ。演出するのは自由である。アイゼンを持っているなら描写してもらって結構。ロープを伝って登るのも、別に問題はない。ただ、ゲーム上の難易度は、ルールブックに記載されていない限り変化しないとするだけだ。そうすれば、プレイヤーは「自分のPCに必要な演出」だけをするようになる。
 ピザの配達人を装って相手を爆殺しようとするのは自由だ。ただし相手に狙いをつけて引き金を引くのと、難易度は変わらない。そうすれば、プレイヤーは「自分にとってカッコいい演出ができる方」を自然と選ぶ。前者でカッコよく演出できる自信があるというのなら、それでもいいだろう──ルールに則って処理ができるならば、だが。


 もちろん、小太刀右京氏はこの辺りのリスクについて、私などより遥かに詳しいはずだ。だからこそ、記事の最後は「次回は口プロレスに対する対処について」で結ばれていた。なので、私はこれまで書いたような意見を一ヶ月留保してきたのだ。
 ところが、一ヵ月後の今日、今月号のロール&ロールにはコーナーそのものがなかった(笑)。なので、一ヶ月遅れは承知の上で、私の意見をここに述べておく。記事の続きを楽しみにしている。

*1:だから、逆説的にいってそれらを多用するプレイ動画は「実プレイに基づいていない」のである。