この土日はほぼこれと……


 「フォースの覚醒」と同時に借りたんだけど、こっちの方が凄くて見入ってしまった。バッドエンドの物語なんて……と敬遠してたけど、やっぱり食わず嫌いはよくなかった。というか、これバッドエンドじゃないな。


(以下、ネタバレありの感想へ。未視聴の人は回避推奨)











 以下、映画館での視聴ではないので、ストーリー順を無視して気付いたところの感想を。


・「バッドエンドではない」というのは、前にも書いたけどバッドエンドの解釈による。主人公たち「ローグ・ワン」は誰も生き残れない。その事実をもってバッドエンドというならバッドエンドだ。しかし、ローグ・ワンは最初から生き延びるために戦っていない。彼女たちは死闘の果てに目的を達成した。主人公は最期、パートナーと共に、微笑みながら爆風の中に消える。望みが叶ったのだからバッドエンドではないともいえる。


・もっと言ってしまえば、この映画は最後の3分間のための映画だ。事前に明かされていた「エピソード4の10分前で終わる映画」。この表現は比喩ではない。ゆえに、結論は最初から決まっている。でありながら、そこに至る過程を描くことによって、明かされている事実に新たな意味を付け加える。こういう話は大好きだ(笑)。


・受け売りになるが、ローグ・ワンはスターウォーズという作品の幅を広げる作品だ、という意見には同意できる。緑なす草原とか、リゾート地のような惑星とか、今まであまり出てこなかった情景があちこちに見られる。それでいて、既存作品をリスペクトしてもいる。クライマックスの場面で、宇宙艦隊がシールドを破るのをまんじりともせず待つ地上部隊の場面は、エピソード6のエンドアの戦いの構図をあべこべにしたものだ。


・逆に、スターウォーズっぽくないとか、主人公たちが地味すぎる、という意見は、これは見当違いというよりも、製作者たち自身がそれを狙って演出しているというべきだろう。今作にはジェダイは一人も登場しない。フォースを連呼するチアルートですら、ジェダイではない。だからこそ意味がある。ローグ・ワンは「名もなき一般人が、多大な犠牲を払って希望を繋ぐ」物語であり、「“その他大勢”にも、ドラマがあって背負うものがある」という物語だ。敵である帝国でさえ、である。


・これまでのスターウォーズにおいては、敵である帝国は内部で権力争いをしていたものの、同盟軍は「力はないが、正義」であり、それがジェダイという力を得て反撃に転じるのが物語の流れだった。ところが、今作ではそれに違った光が当てられる。同盟内部の意見はバラバラ、意志決定もグダグダであり、それによって多大な犠牲が出てしまう。主人公の父親が(それも育ての親、生みの親両方とも)殺されたのは同盟内部の意志決定の不統一のせいだし、クライマックスの大きな障害となるシールドの展開も、同盟軍が勝手に出撃したせいだ。


・それが、最後の3分間で転化する。


・帝国に降伏しよう、なんていっていた同盟の兵たちが、ローグワンという犠牲を払って手に入れた「希望」を必死に繋ごうとする。決して格好良くはない。「助けてくれー!」などと絶叫しながら、それでもその手から手へ、希望は手渡される。彼らの背後を絶つ「絶望」──それはもちろん、ダースベイダーだ。今作のダースベイダーの太刀筋は、1〜3のアナキンの華麗な剣技と、4の「スコップの殴り合い」と揶揄された剣技のちょうど中庸をいっているあたり、芸が細かい。その迫力は圧倒的だ。何しろ彼は、今作では唯一のフォースの使い手なのだ。殺戮である。
 しかし、そのダースベイダーをもってしても、希望は絶てなかった。観客はそれを知っている。


・そして、最後に登場したレイア姫*1、データディスクを手に「希望です」と答える。これはバッドエンドではない。ハッピーエンドに繋がる物語だ。4に繋がる物語として、これ以上のものがあるだろうか。


・また、ネットではあまり見かけなかった、私の個人的な感想だが、今作は「破滅的なシーンが、途轍もなく美しい」。同盟のアジトの薄汚い猥雑さに比べ、帝国のデータベースを納める惑星スカリフの白い浜辺、緑なす大海の美しさ。そして、二回放たれるデススターのハイパーレーザーによる破壊シーン。スカリフに向けて放たれる一撃は、それが主人公たちを抹殺する一撃でありながら、途方もなく綺麗だ。最後の、暗闇に立ち剣を構えるダースベイダーに至っては、言うまでもない。


・あとは、今回の悪役、帝国のクレニック長官。主人公の母親を殺し、父親を結果的に死に至らしめ、デススターを建造した極悪人だが、手柄をターキン総督に奪われ、ダースベイダーにプレッシャーを掛けられ、最期はスカリフもろとも粉微塵にされる。美しいスカリフの上空に幻想的に白く浮かび上がるデススター──自分が全てを犠牲にして作り上げた被造物から、自らに向かって放たれるレーザーを見つめる目。どうしようもない無常を映していて、ただの悪役の枠に収まっていなかった。今作公開前に「ローグワンは4に一人も登場しないのだから、全滅は決まっている」と言われていたが、むしろそれが当てはまるのはクレニック長官の方ではないだろうか。


・ローグ・ワンは、スターウォーズという作品に色々な掟破りを持ち込んだ。主人公はフォースの使い手でなくてもいい。ジェダイが出てこなくてもいい。同盟は正義の味方でなくてもいい。クライマックスはライトセイバーでの切り合いでなくてもいい……。今作が評価されたことで、これから色々なスターウォーズが見れる可能性が増えたのであれば、今はそれを素直に歓迎したい。


・最後におまけ。昔、TRPGスターウォーズという作品があったのだが、ジェダイとそれ以外のキャラクターの能力値が違いすぎて、ゲームにならないと評判だった。しかし──ローグ・ワンを見て納得した。こりゃ勝負にならないわ(笑)。

*1:ダースベイダーの登場は知っていたが、レイア姫の登場には驚いた。前振りが全くなかったので。