この彷徨う塔って、プレイヤーが内部で探索してる間も動いてるのか……。他のゲームではあんまり見たことないギミックだな……。
リニューアル!?
コロナとかいろいろあって1冊買い逃してしまい、2冊いっぺんに買ったら突然リニューアルの話が出ていてびっくりした。今回はそういうのじゃないと信じてるけど、オールドTRPGゲーマーとしては、雑誌リニューアル後即廃刊とか休刊という例も(新和のFGジャーナルとか角川のゲームクエストとか)結構あるので、一抹の不安もある。
正直にいうと、今のゲーマーズ・フィールドは、もう何年も何の刊行物も出ていない、かなり古いタイトルを含めてサポートしてるので、ここでサポート対象となるタイトルを整理したいというのであれば事情はわからなくもない。
その視点でリニューアル前の最後に当たるVol.6号を見ると、サポートページの連載は一旦すべて終了することになっているものの、「この連載は終わるがリニューアル後に新しいサポートページを連載予定」と明記されているのはサポートが続くタイトルだろう。逆に「貴方のセッションが続く限り、このタイトルは終わらない」みたいな表現になっているのは、恐らくここでサポートが終了するのだと推測ができる(どちらも書かれていないものもあって怖いが……)。
公式のTRPGリプレイ書籍が非公式の無料TRPG動画に取って代わられてしまい、当時の関係者が今どのように業界に関わっているのかは、発売されるサプリのクレジットくらいでしか掴めなくなってしまったが、各タイトルの去就は大体想像していた通りだ。
特に、井上純一氏が関わっていたアルシャードセイヴァー、ビーストバインド、エンゼルギアはどれも後続を匂わせていない。また、原作付きだったポリフォニカも終わるようだ。個人的には、ブレカナも終わるっぽい書き方になっているのが残念だ……。恐らくファンタジーRPGは競合が多いからだろう。
逆に、ほぼはっきり続くと書かれているのはダブルクロス、アリアンロッド、トーキョーナイトメア、モノトーンミュージアム。アリアンロッド以外の3つは今後サプリが発売される予定もあるし、連載そのものもリニューアル後も続きそうだ(比較的新しいタイトルについては、個人的に詳しくないので省かせてもらう)。
あとは、NOVAの記事の末尾に何も書かれていないのが気になる。被るという意味ではトーキョーナイトメアと被るのだろうが、思い入れのあるタイトルだし(制作者にとってもそうだと信じたい)、NOVAには続いてほしい……。そして、SRS最後のタイトルになってしまうかもしれないモノトーンミュージアムにも是非頑張ってほしい。
しかし、今日したいのはダブルクロスの話だ。天羅やNOVAについてはこれまで色々書いてきたが、ダブルクロスについてはあまり書いてこなかった気がするので。
段々盛り下がるゲーム?
以下は私の個人的な見解であることを最初にお断りしておく。
実は、TRPGというのは、ある構造的な「欠陥」を抱えたゲームである。「人を集めるのが大変」とか「時間がかかる」とか、そういったセッションを成立させるための条件を、仮にすべて満たしたとした上の「欠陥」だ。
TRPGは、システム的に見ると、セッションが進めば進むほど盛り下がることを宿命づけられている。
「そんなことはない」と反論が来そうだが、言いたいのはこういうことだ。ほとんどの(全ての、ではない)TRPGでは、PCに最大のリソースが与えられるのはセッション開始時(厳密には「冒険出発前/ストーリー開始前」)である。HP、MP、呪文スロット、アイテム、技能、神業、何と呼んでもいい。様々なリソースがPCに与えられるが、それらはひとたびダンジョンに潜ったり、町を出たり、情報収集を開始したりしてしまえば「減る一方」である。多少回復することはあるかもしれないが、開始時より増えることは少ないはずだ(セッション中に魔晶石を無計画にバラまくようなGMでない限りは!)。*1*2
多少穏やかな表現を使えばこうなる。
TRPGは、セッション開始時に与えられたリソースをやりくりするゲームである。
リソースを使えば使うほど、できることは減る。つまりセッションの前半ではできるだけリソースを減らさないことを「自発的に」求められる。GM側のリソースはプレイヤー側には一切明かされない。従って、プレイヤー側は、どれだけあるかわからないGM側のリソースを予測しつつ、自分のリソースをコントロールしなければならない。セッション前半でマジックユーザーが高レベル魔法を連発することは可能だが、それをしたら後半は案山子になるしかない。これは、TRPGシステムが「チェインメイル」という「個人級シミュレーションゲーム」に起源を持つからだ。
一方、TRPGを「ストーリーを生成するツール」と見た場合はどうだろう。一番自由に、派手に動けるのはセッション開始の時点で、そこからは、ペースはどうあれ、リソースは減っていくのみ。セッション開始時にパーティにボスをぶつけ、後は雑魚戦だけで済ますGMはなかなかいないだろうが、PCの持つリソースという面でいうと、ボスと戦うのに最も適した万全の状態とは、すなわちセッション開始時なのだ。
物語としての盛り上がりと、PCの持つリソース量が相反する。
これが、多くのTRPGの持つ構造的な欠陥であり、多くのGMを悩ませてきた命題だ。*3
ロールプレイ支援システムの持つ意味

- 作者:純弌, 井上,ファーイーストアミューズメントリサーチ
- メディア: 単行本
私が天羅万象を始めとするロールプレイ支援システムを持つゲームが好きなのは、この矛盾を解決できるからだ。ロールプレイ支援システムは、プレイヤーのロールプレイを評価することで、PCのリソースがセッションが進むにつれて増えていくシステムである。従ってセッションが進行していくほど、開始時に比べてPCのできることが増える。
つまり「PCの持つリソースから見た、システム的なセッションの盛り上がり」と「物語の盛り上がり」を連動させることができる。
ただし、天羅で散々言われたように、ロールプレイ支援システムにも欠点がある。それは「セッションメンバーが仲のいい友人だったとしても、必ずしも感性が合うとは限らない」というものだ。ロールプレイ支援システムは、プレイヤーがカッコいい、あるいは優れたと思ったロールプレイを、GMが評価しないと始まらない。「プレイヤーがカッコいいと思ってロールプレイしたのに、GMがそれを評価しない」という状況が起きると、セッションも進まなくなるし、最悪セッションメンバーとの信頼関係に悪影響を及ぼしかねない。
幸運の風
ではロールプレイ支援システム以外に、セッション中にPCが使えるリソースが増えていくゲームはないのか。実は、ある。
一つ目が「ギア・アンティーク」である。
ギア・アンティークには「幸運の風」というルールがある。これは、通常の判定の「代わり」として使用でき、成功すると「幸運の助けにより」行動が成功したことになる。そして重要なのは「幸運の風」を使用するたびに、成功値が上がっていくというルールだ。ツイている時はとことんツイている、というのを表現しているといえばいいのだろうか。幸運に頼れば頼るほど、幸運に見舞われる可能性が高くなっていく(つまりPCにとって山場が近くなるほど使えるリソースが増える)。このルールによって、一介の学生や主婦がフライパンで歴戦の軍人を殴り倒したり、なんていうシチュエーションも再現できる。
しかし、幸運の風が一定の数値を超えると、PCはしっぺ返しに見舞われ、数値は初期値に戻る。プレイヤーはいざという時に頼れるように数値を操作するコツが要るが、上昇値がランダムであるため、完全に制御はできない。
アイデアそのものは面白いルールだったと思う。*4
かのものの呼び声

新クトゥルフ神話TRPG ルールブック (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
- 作者:サンディ・ピーターセン,ポール・フリッカー,マイク・メイソン,ほか
- 発売日: 2019/12/20
- メディア: 単行本
二つ目が「クトゥルフの呼び声RPG」のSAN値である。
SAN値はセッション開始後減少するものなので、一見するとリソースが減っているように見えるが、クトゥルフの呼び声RPGはホラーTRPGであり、普通のファンタジーRPGのHPやMPといったリソースを削るのとは事情が異なる。探索者が一時的狂気に陥ったり、真の狂気に近づいたりすることは、ホラーとしては「盛り上がる要素」になる。つまりシステム面から見るとリソースの正負の数値が逆になっているだけで「開幕時が一番盛り上がりから遠く、ストーリーが山場に近づき、SAN値が減ることによって話は盛り上がる」のだ。
ただし、これは「何とか生き延びたい」という探索者本来の目的と「話が盛り上がる」という物語の目的が二律背反を起こすセッションとなる。そのため、クトゥルフの呼び声RPG(を含むホラーTRPG)は、他のTRPGとは少々異なる独特のハンドリングを要求される。ぶっちゃけ、私はうまく回せる自信が全くない。
もうどこにもいない君のために
そして三つ目が、ダブルクロスの侵食率である。
シーンに登場すればするほど侵食率が上がっていき、判定値が上昇し、エフェクト(能力)のレベルが上がる。物語が山場に近づけば近づくほど、達成値は高くなり、ダメージは大きく、展開は派手になる。しかし、それは単純な強さの上昇を意味せず、行き過ぎれば、幸運の風のしっぺ返しどころではなく、待っているのはジャーム化──キャラロストしかねないというジレンマを表現した秀逸なルールだ。
しかも、ダブルクロスのこのルールは、世界設定と無理なく、かつ密接に関係しあっている。「レネゲイドウイルスによって侵食されればされるほど、人を超えた力を奮うことができる」とイメージもしやすい。
ロールプレイ支援システムのようにGMの主観の入る余地がなく、クライマックスにはちゃんと盛り上がるように計算されたシステム。それでいて世界設定は「現代日本+レネゲイドウイルス+ほんのちょっと」だけなので、GMとしても非常にやりやすい。恐らくFEARゲームの中でも、アリアンロッドと並んで初心者向けにお勧めのシステムだ。解説するとしてもシンドロームの種類くらいなものだ(エフェクトは自分が使えるものだけ説明すればいい)。
GMから見ても、ネタに困ったらちょっとどこかの作品から持ってきてレネゲイドウイルスやオーヴァードを絡めてしまえばシナリオができるので、非常に楽である(実際、私はブラックジャックの某話を元ネタにシナリオを作ったことがある──プレイヤーには即バレたが(笑))。
そういう意味で、まだまだポテンシャルを秘めているゲームだと、私は思っている。今回のリニューアルで真っ先に安心したのはダブルクロスのサポートが続くことと(この情勢下で延期されたとはいえ)サプリメントの発売が予定されていることだった。
そんな訳で、次号予定されているリニューアルがどうなるのかは、実際に見てみないとわからないが──少なくとも、今私の手元にある23年前に刊行された同誌第4号以降、誌面の全面リニューアルなどあった記憶がないのだ──少しでも良い方向に進むように、そして願わくば私の好きなゲームのサポートが今後も続くように、祈るばかりである。
*1:なお、経験値はここでいうリソースには当たらない。何故なら、シナリオの最中にレベル上げ作業を行って、リソースを「増やす」ことを想定しているシステムはほとんどないからである。レベル上げはシナリオの前か後、つまりキャンペーン単位でのリソースの増加には寄与するが、セッション単体でのリソースの増減には影響を与えない。
*2:入手するアイテムに関してだけは、セッション中に「増える」リソースだと言ってもいいかもしれない。しかし、普通戦利品の分配はシナリオ終了後だと思われるので、経験値同様、セッション単体への影響は低いはずだ。
*3:FEAR系のタイトルの多くにある、シナリオがクライマックスに達した時に、クライマックスフェイズを宣言することなどは、この「リソース管理」を助けるというのも大きな存在理由になっている。プレイヤーがシナリオの予測を誤り、適切でない場所でリソースを切ろうとした時に、それを抑止する意味を持つ。
*4:なお、姉妹作のブルーフォレスト物語にも「悟りポイント」という、幸運の風に似たルールがあるが、判定値の関係で一回のセッションの盛り上がりに寄与できるレベルではない(キャンペーンを前提としたルールである)ため除外する。