怪我をすると勝ち目がなくなる?

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 お約束だが、TRPGの話をしよう。とはいえ、すでにコメントの中でTRPGのことに触れつつ、核心を突いてしまっている人がいるのだが……。
 ヒットポイントが減ると攻撃力が減るというシステムについては、一見「怪我をすると有効な打撃が繰り出しづらくなる」ということでリアリティがあるように思えるかもしれない。
 しかし、多くのゲームでこのシステムを採用していない理由は、初期のTRPGの一つであるトンネルズ&トロールズの「モンスターレート制」が端的に示している。ぶっちゃけ、ヒットポイントが減ることによって攻撃力が減るシステムだと、一旦片方が負けだした段階でほぼ勝敗が決してしまう。にもかかわらず、ヒットポイントが尽きるまで消耗戦を続けなければならないのが非常に不毛だからだ。



 ダンジョンズ&ドラゴンズのドラゴンブレスに言及している人もいるが、これも敵専用のギミックで、PCに採用されていない。これも同じ理由によると思われる。

 では、ヒットポイントが減ると攻撃力の減るTRPGは存在しないかというと、もちろん存在する。
 コメントではネクロニカに触れている人もいるが、私が真っ先に思い出したのはルーンクエストである。ルーンクエストには部位ごとのヒットポイントという概念がある。傷を負うと腕や足のHPがなくなり、使えなくなることによって攻撃力が減っていく。ルール処理は非常に煩雑だが、リアリティを追求したシステムだ。では、先に挙げたような欠点をどのように克服しているかというと、元々ラッキーヒットの比重が非常に大きいゲームで、怪我している側が攻撃しても、無傷の相手の頭にたまたま命中し、兜を貫けば即死させられる可能性がある。逆もまた同じという点で、決着がつくまでどちらも気が抜けないという意味でバランスは取れている。



 また、ロールマスターというゲームの場合、痛打表といって、クリティカルを振ると相手が部位などの欠損を起こし、攻撃力などが減るというシステムになっている。ただ、こちらの場合、あくまでクリティカルの効果なので、トンネルズ&トロールズのように敵側のヒットポイントが減り出したら、ほぼ勝ち目がなくなるというようなシステムにはなっていない。

 では逆に、ヒットポイントが減ると攻撃力が上がるゲームは存在するだろうか。これまた私が真っ先に思いつくのは無印天羅である。こちらはドラマ性を重視するゲームデザインになっており、敵から攻撃を受けて負傷ゲージを埋めると、火事場の馬鹿力的なもので攻撃や判定などにボーナスがつくというシステムになっている。
 また、間接的な数値の上昇になるが、ダブルクロスも敵からダメージを受けることによってリザレクトという蘇生効果が発動する。これによって侵食率が上がり、攻撃力や判定値などが上がるシステムになっている。



 これらは、ヒットポイントが減ることによって攻撃力が減るシステムに比べると、逆転要素があってドラマティックだと思う。ロールプレイにも繋げやすい。
 それに、怪我をすることによってアドレナリンが分泌されて痛みを一時的に感じなくなったり、危機的な状況で信じられないような力を発揮したりするケースは現実でも発生し得るわけで、「ヒットポイントが減ることによって弱くなっていく」というのは、本当にリアリティがあるのか、という考え方もあるだろう。
 とはいえ、これについて語るなら、まずは今まで散々語られた「ヒットポイントは怪我の程度のことを表しているかどうか」というところから定義する必要がある話なのだが……。