紅茶飲みすぎだろ……


 ダージリン、一日10回も紅茶飲むのか……いや、飲む回数はともかく、ティータイム以外の日常生活はどうやって送ってるんだ(笑)。
 ちなみにこのCDドラマ、インタビュー形式なんだけど、キャスト見るまでインタビュアーとダージリンの中の人が同じであることに気づかなかった。言われてみればインタビュアーの方はまんまさやかの声だな……さすがはプロだ。 


 さて、昨日の続きで、また益体のない妄想でもしようと思う。
 今日のお題は──


“本当に勝ったのは誰?”


 である。もちろんネタバレありなので折り畳みで。












 さて。劇場版のクライマックス、大学選抜チームとの試合が終わり、本当に勝ったのは誰だろう。
 与えられるはずだったものを取り戻した“だけ”の大洗学園ではない。勝ったのはもちろん、西住流家元、西住しほである。


 順を追ってお話ししよう。昨日に引き続き、劇場版の余韻を味わいつついろいろ思い返していたら、何点か「ん?」という疑問が湧いてきた。特に、作中少々不可解なことを言っている御仁が二人ほどいた気がするのだ。

西住流の事情

 一人目はしほだ。彼女は蝶野が訪ねてきた場面で、確かこんなことを言っていた。
「大洗学園が廃校になったら西住流が叩き潰すことができない」と。
 しかしよく考えるとこれはおかしい。ご母堂はまさかお忘れではないだろうが、長女のまほは高校三年生。あと半年で卒業だ。すなわち来年の戦車道大会で雪辱を果たすことは、大洗学園の廃校如何に関わらず不可能である。今後雪辱の機会が訪れるとすれば、まほとみほに妹が生まれて高校に入学するか、あるいはまほの娘が黒森峰に入学した時の話である。
 それとも、地元の黒森峰学園が来年勝利すれば西住流が勝ったことになるのだろうか? いやいや、周囲はそうは見ないだろう。何しろ来年の戦車道大会がもしあれば、そこに大洗学園が参戦する可能性は決して低くない。西住の名を持つ娘が大会に参戦していながら、西住流の内弟子というわけでもない他人のエリカが率いる学校が、西住流の代表と見做されるとは思えない。
 では、戦車道大会が年に複数回開催されている、あるいは別に知名度の高い公式大会が存在しており、しほがそちらを想定している可能性は? これも私は低いと考えている。なぜなら、そんなものが存在するなら、大洗学園の生徒会メンバーはまだ経験の浅い今大会ではなくそちらの大会をターゲットに準備したはずだからだ。*1 
 つまり戦う機会があったとしても、親善試合的な場面しか存在しないのではないか、と推測できる。もしそうだとしたら、それこそ廃校でも懸かっていない限り大洗の側から申し込む理由はない。黒森峰側が頭を下げなければそもそも試合が成り立たないのである。

島田流の事情

 さて、それはひとまず置いておき、もう一人の不可解な発言を追ってみる。
 二人目は島田流家元、島田千代である。彼女は娘に電話をかけ、こんな主旨の発言をしている。「西住流の名が地に落ちるように、全力で叩き潰せ」と。
 これまた妙な発言である。みほは西住流を飛び出し、勘当された身だ。しかも地元を離れ、全く別の学校で戦車道を続けている。それを叩き潰したところで、西住流の名は地に落ちるものだろうか? それを言うなら、まほを潰さないといけないのではないだろうか?


 この時点で、島田流と西住流を比べてみよう。かたや、飛び級で格上の学校に入り、チームを率いてさらに格上のチームを破ってみせた家元の娘。かたや、一族を飛び出したはねっかえりが指揮する寄せ集めの即席チームに破られた家元の娘。内情はともかく、少なくとも形式的には差は歴然としている。

アリスの事情

 さて、場面はクライマックス、試合の直前に移る。8対30の絶望的な状況に際して、大洗学園にまさかの22両の参戦表明。審判は「拒否できるのは対戦相手だけ」だと文科省の役人に告げる。
 アリスは何故これを拒否しなかったのか。
 拒否できるわけがないのだ。
 最初の状況では、はっきり言って島田流にとっても、大学選抜チームにとっても何の益もない勝負である。8対30で相手を叩き潰したところで、島田流の名は上がらないだろう。勝って当然、百万が一負ければ、末代まで笑われる。
 加えて、先ほど書いたとおり、相手は西住流本流ではない。傍流だ。飛び級してまでより強いチームを目指し、大学選抜を指揮して社会人チームをも破った名声を持つ者が積極的に戦うべき理由は全くないと言える。恐らくそれでも全力を尽くすのが戦車道なのだろうが。*2

 それが、高校生側の加勢によって、少なくとも数だけは公平な勝負となった。しかも、相手には西住流本家家元の娘が参陣してきた。これを叩き潰せば、本当に本来の意図通り、西住流の面目を潰すことができる。
 文科省視点で見ると「いきなり加勢とか卑怯」に見えるし、主人公側からちょっと引いた視点で見ると「なんでアリスは断らなかったんだ? スポーツマンシップ?」という疑問を抱きかねないが、何のことはない。島田流視点で見れば元々「断る選択肢はほぼ存在しない」のである。そしてまた、参戦した側も薄々「相手が断れないことを承知の上で」加勢に来た節もある。だからこそ、杏はつくづく食わせ者だ、という話になるのだが……それは昨日と被ってしまうのでさておくとしよう。

軍神の事情

 そしてここに、もう一人の食わせ者がいる。“軍神”その人である。
 意図的なのか、あるいは偶然なのか。私は前者を推したい──大学選抜チーム相手に奮戦した西住流姉妹は、最後の場面で2対4の勝負に持ち込む。数の上では劣勢、しかも島田流家元の娘はそこに到達するまでに、高校生選抜チームの精鋭たちを瞬く間に撫で斬りにしてきているという場面である。
 ここで西住姉妹は、3輌を連続撃破。数の不利を跳ね返す。


 そして、最後の最後──みほは、自分の車両を犠牲にして、まほの車両を生き延びさせることで勝利を得た。


 試合の趨勢を見守る者たちの目には、果たしてどう映っただろう。高校戦車道大会で、傍流の寄せ集めの即席チームに負けたと思われた家元の娘は、格上である島田流家元の娘との勝負を制し、そして最後まで生き延びた。みほの4号戦車ではなく、まほのティーガーIこそが残ったのだ。
 西住流にとって、これほどの面目躍如はないだろう。西住流を捨てたはずの傍流が、本流と力を合わせてライバルを破り、そして最後に本流が生き延びる。島田流に水をあけられていた西住流が、追いついて余りある大戦果。
 みほとまほの力量を考えれば、あるいは逆の状況もあったのではないか? つまりまほの車両を犠牲にして、みほが生き延びる。これが大洗の戦いである以上、本来そうなってもおかしくないはずだ。しかし、みほは逆を選んだ。戦車道大会決勝で白旗を揚げたティーガーIに、最後まで旗が揚がることはなかった。
 最初に述べたように、冷静に考えれば黒森峰の雪辱の望みは限りなく薄かった。それがこれ以上ないほどの大舞台で、しかも黒森峰側が頭を下げるのではなく、あくまでも大洗が助けを請うという理想的な形で雪辱を果たし得たのだ。


 ……それは、みほからまほやしほへの詫びであり、礼であり、恩返しではなかったか、と思うのは考えすぎだろうか?


 もちろん──こんなのはただの下衆の勘繰りであり、普通に考えればこうなるだろう。
 黒森峰で組んでいた頃、まほは隊長車、みほは副隊長車に搭乗しており、みほは隊長車を生き延びさせて自分たちが盾になる状況に慣れていた。だからその頃のコンビネーションが蘇ったのだ、と。
 ただ、記憶だけが頼りでうろ覚えなのだが、ラスト近く、あの台詞が消え戦車の駆動音と砲撃音だけが響く緊迫したシーンで、まほがみほの方を向いて一瞬驚いた顔を見せたような気がした。それがどうにも引っかかるのである。


 ラストシーン、観覧席で見守っていた家元たちの目に、娘たちの戦いはどう映っただろう。
 「次は遺恨のない試合をお願いしたい」……千代の台詞はまさしく本音だろう。文科省の役人が妙なことを言わなければ、島田流はいまも優位だったはずだ。余計なことを……と本音では蹴飛ばしてやりたく思っているだろうか? それとも逆に、それでこそ我がライバル、と内心で闘志を燃やしただろうか。
 しほはどうだろう。恐らく、この結果に安堵するような性格ではない。やはり大洗は叩き潰さなければ、と思っただろうか。あるいは、まほが来年以降必然的に戦うこととなるアリスや島田流との戦いに思いを馳せたのだろうか。それとも……?*3


 ……などとつらつら妄言を書き連ねてきたが、今回の劇場版一番のお気に入りキャラは「ペパロニ2号」ことローズヒップなんだけどね!


 「ローズヒップは自分を曲げないでごぜーます!」

コメント注意


 TV版の方は公式スタッフすらコメントしたほどの有名MAD。ようやく待望のOVA版バージョンが出た(たぶんニコ生の無料放送を待った対応)んだけど、時期がよくなかった。劇場版公開直後だけに、ネタバレコメントがわんさとある。なので、劇場版未見の人は(あるいは見た人も)コメントは非表示推奨。

*1:生徒会メンバーは廃校は来年3月末だと考えていた、と劇場版で言及している。

*2:そう考えると、あのシーンでアリスが母親にわざわざ“報酬”を要求した理由も見えてくる。

*3:なお、劇場版よりも後の時間軸になると思われるコミックス「リボンの武者」の2巻では、噂話として「西住流が分派した」という台詞が登場する。同じ場面で島田流にも触れられている。