闇の(?)ファイティングファンタジー

 私のブログでは基本的に、広告収入を得ていたり企業が公開したりしている情報を除く、完全な個人サイトについては、知り合いのものを除いてあまり紹介することがない。しかし、ちょっと前にとあるサイトで私のブログを紹介してくださったようなので、相互リンクということでこちらも紹介させていただこうと思う。


y-koutarou.hatenablog.com


 こちらはゲームブックを中心に解説しているブログで、数字のバランス等やパラグラフ構成などもかなり深く研究していて大変参考になる。古い有名な作品ばかりではなく、GMウォーロックの掲載記事のような、比較的新しい作品が研究されているのも興味深い。
 ところで、このブログを読んでいて初めて知ったことがある。それがこれだ。


y-koutarou.hatenablog.com


 ファイティングファンタジー・コレクションシリーズについては、過去に翻訳されて現在入手困難になっている作品を再販してくれることも、これまで日本語に翻訳されることのなかった作品を翻訳してくれることにも感謝している。なので、これまであまり厳しい言葉を使ってこなかったつもりだったが、これはちょっと、いや、かなりヒドい。ここから先は例によって辛口なので、念のため折りたたむことにする。











 
 以前、ファイティングファンタジーシリーズについて「続編ものとして書かれている作品についてはあらかじめ技量点を高くするとか、盗賊という設定のキャラクターなら運点を高くするとか、そういったキャラクター作成時点での個性付けがあってもいいのではないか」という話を書いたことがある。実際、最新作である火吹山の伝説においては、4人のキャラクターから主人公を選択する形になっており、第1パラグラフ時点で主人公の個性付けがされている。
 で、詳しくはリンク先に譲るが、こちらの記事で話題になっているのが「『サラモニスの秘密』で主人公は冒険者として未熟な人物という設定があったために、スタート時点のパラメータが既存作品よりも明確に低くなるように設定されていたにもかかわらず、それに気づかず、キャラクター作成ルールを既存の作品からコピー&ペーストしてしまった」というものだ。



 正直、最初に読んだ時には目が点になった。
 まず、これは誤訳のような「ミス」ではない。もちろん誤訳もあってはならないことではあるが、人間であれば間違えることはある。それがたとえ城砦都市カーレの旧訳のように実質的にエンディングにたどり着けなくなってしまうようなものであったとしても、どうしても発生するのは避けられない面はある。
 これに対して「ファイティングファンタジーシリーズの主人公のキャラクター作成ルールは過去のと同じだと思っていたので、読まずに*1過去作品のものをコピー&ペーストしてました」というのは、ケアレスミスとか解釈違いとかそういうレベルの話ではない。

 また、このシリーズは受注生産であることを前面に押し出している。ということは、基本的には第2刷はないだろう。そうなると「最新版では修正しました」ということもできない。このキャラクター作成ルールのエラッタの影響は非常に大きいが、公式ホームページやSNSをチェックしない人間は、その存在に気づけない。私も、前出のブログを訪れることがなければ気づかなかっただろう。

 さらに「キャラクター作成ルールは毎回同じだと思っていたので、読まずにコピー&ペーストしていました」という話だと、「じゃあ、これまでに翻訳した他の作品はどうなんだ?」という話が出てくる。実際、「サラモニスの秘密」でこの指摘があった後、最新の「火吹山の伝説」ではキャラクター作成ルールが既存のそれとは違ったわけで「その前の作品に関してはどうだったのか」と疑いたくなってしまう。
 もしかしたら、キャラクター作成部分に何らかのギミックや新しいアイデアが盛り込まれた作品があったかもしれないが、そちらも翻訳時に過去の作品のキャラクター作成ルールをコピー&ペーストしていたとしたら、日本語版のみを読んでいる読者には、正しい情報に触れる機会は永久に訪れない。



 しかも、フォローのつもりなのか、その後の呟きで「原書版のバランスだと厳しいから、多少ボーナス入れた方がいい」と書いたのも、ブログ主にも、ブログ主がアンケートを取った読者の6割からも「原書版のままのバランスで十分」とばっさり切り捨てられているのを見て笑ってしまった。
 前に「蘇る妖術使い」の時にも、翻訳チームの方々は「選択肢をたどってはいるものの、実際にサイコロを振って遊んでいないんじゃないか」と疑われていたけれど、こうして緻密に研究している人から指摘があるようだと、その印象がさらに強くなる。


 それにしても……仮にそれが本当の理由であったとしても、公式の謝罪文で「過去の本からコピペしたので間違えました」とあっさり書くというのは凄いな……。

*1:ちゃんと読んでいれば、内容が違うのだからコピペしようとは思わないはず。