ブレカナの殺戮者(マローダー)は救済できるか?(2)


 前回のエントリの続きである。
 今回は過去に出版されたサプリメントやシナリオのネタバレを含むため、一応折り畳む。現行最新版の掲載シナリオのネタバレはないので念のため。














 もし、救いたいと思っているのがNPCの殺戮者の場合はどうだろうか。前回のエントリで「ソースのないことは書かないようにする」と書いたものの、今回は前回より私個人の推察が多く入る。というのも、題材がNPCの去就ということもあって、ルール処理が明記されていない、それどころか真相すら明記されていないケースがあるからだ。また、恐らくソースを紛失したのではないかという、私自身の不手際もある。

「ツェルコン」ガイリング2世

 ルールブックに掲載された世界設定を読む限り、殺戮者だったのに救済されたと思われるNPCが二人存在する。1人はツェルコンことガイリング2世である。こちらは、救済されただろうというのは推測だ。3rdエディションの1070年の彼の説明を読むかぎり、殺戮者でなくなった可能性が高いと思われる。
 元々彼は1060年の段階で殺戮者であると書かれ、殺戮の衝動を超人的な精神力で抑え込んでいるが、負けるのは時間の問題と言われていた。ところが、ハイデルランドのアンセル王子との同盟、北伐の敗北により重傷を負い、何年もの間昏睡状態にあった。奇跡的に蘇った彼の言動は、殺戮者のそれとは思えないものになっていた。
 ガイリングに関しては、直接救済を示唆する特殊因果律もないため、かつての覇道を征こうとする(つまり戦乱で刻まれし者から聖痕を集める)彼が何故変貌したかはわからない。ただし、そのきっかけになったかもしれない出来事が二つある。

 一つは、前述のアンセル王子との同盟だ。アンセル王子は北伐からの帰還後、身体を機械に替え、別人のごとく冷酷な人格に変貌した。妹であるヒルデガルド王女に宛てた手紙を見れば、彼が変貌前に、いずれ自分が殺戮者に成り果てることを予測していたことは明らかである。つまり、北伐からアンセルが変貌して帰り、ガイリングが昏睡状態で帰還したということは、彼が帯びていた聖痕を吸収したのでは? という推測が成り立つ。ただし、殺戮者同士が聖痕を奪い合った場合は敗北した側は死ぬのが普通であり、奪われた者が聖痕者でなくなり、闇の運命から帰還するというのは前例がない。

 もう一つが、大火焔竜ロヴレンドが斃れたことだ。サプリメント「スレイヤーズ・オブ・レッドドラゴン」において、ガイリングと同盟していた強大な殺戮者、ロヴレンドが斃された。彼は自らの使い魔、エロイーズを通じてガイリングに多大な影響を与えていた。ロヴレンドは1060年以降、ハイデルランドの主都を襲い、国王ヘルマンを殺害するが、これは北伐で倒れたことで、盟友であるガイリングの制御が利かなくなったからだとも言われる。



 ガイリングの最も近くで多大な影響を与えていた二人の殺戮者がそれぞれの思惑で動いたうえ、その後恐らくはPCの手によって斃されたことにより、闇の呪縛が弱まり、そこでさらに何者かが裏で動くことで、本来成し得ない救済を成し得たのではないか、という推測である。

ディアスポラのアルダ

 そしてもう一人がディアスポラのアルダである。こちらはスーパーシナリオサポートで、キャンペーンシナリオを完了させることによって救済されていた……はずなのだが、手元にあったはずのスーパーシナリオサポート・フルキフェル編が見当たらなくなっており、裏が取れない。
 記憶に頼って書くことになるが、アルダの魂を闇に捕えようとしていた魔神パラモルが、気まぐれでアルダと因縁を持つPC達に試練を与え、もし試練に敗北したらその魂を捕えてPCたち全員を殺戮者とし、万一勝利したらアルダの魂を解放する、という筋書きだったはずだ。

 いずれにしても、どちらも「NPCの殺戮者の救済には、そのための専用キャンペーンシナリオが必要になりそうだ」という点がほぼ共通している。

王権の貝殻

 そして、最も確実なのが、特殊因果律「王権の貝殻」である。これは「あらゆる願いが叶う」とされており、もちろん殺戮者の救済も可能であることがルール上はっきりしている稀有な例である(逆にいえば、これがある以上、普通の特技や奇跡の効果では救済できないということになるのだが……)。ちなみに前回、PCの救済の時にこれを挙げなかった理由は、PCがNPCとなってGM預かりとなる瞬間には、この因果律を使用するタイミングがなく、NPCになった後に使用するのであればむしろ今回のエントリの範疇だからである。
 ただし「王権の貝殻」は、願いをかなえる条件として叶った願いと同等の代償が必要となる。殺戮者1人を救済するということは、誰か1人刻まれし者が殺戮者になる。それも願った者にとって、救いたいと思った殺戮者と同程度の重要性を持った人物。それがいないなら、自分自身が殺戮者になることを意味する。自分自身すら大事に思っていない人間であれば、おそらくこの願いを叶えることそのものが不可能になると思われる。


 そして、ガイリングとアルダどちらの例についてもいえるのが、殺戮者から救済された後の2人に関する記述を見ると、どうも刻まれし者でもなくなっている、つまり本来持っていた3つの聖痕も含め全ての聖痕を失い、今はただの人になっているのではないか、という疑いがある。
 これもまたはっきりと明言されているわけではないが、帰還後の2人は歴史にそれほど強い影響力を及ぼしていない。アルダに至っては表舞台から完全に消えている。これはある意味整合性の取れた話であって、殺戮者であることから救済されているのに、まだ残っている聖痕があるというのは「それって運命から解放されてないのでは」と考えられるので、救済=シナリオ中で重要な果たす存在ではなくなり、ルール的にはエキストラに近い存在になる、ということなのかもしれない。
 あとは、プレイヤーがそれでもなお救済したいと考えるかどうか、という問題ではないかと思う。