彼らの事情も人それぞれ


 こうして見てみると、狙ってサイバーサイコを倒して回ってるわけじゃないんだけれども、ここで紹介されているサイバーサイコには一通り出会ったことがある。動画でも言われているように、サイバーサイコになってしまった事情は人によって千差万別、そしてその末路も人によって様々だ。
 「戦争帰りでパラノイアになってしまい、セキュリティシステムで家族を死なせてしまってサイバーサイコになった」とか、前に紹介した「脱サラして店を買い取り、新しく商売を始めようとしたら、企業に騙されて莫大な借金を負わされたショックでサイバーサイコ化する」とか、その辺りは割とサイバーパンクとしてわかりやすかったのだが、一人だけぶっ飛んだのがいた。
 「妹に薬で昏睡させられてる間に、全身にサイバーウェアを埋め込まれて、しかも結婚相手を奪われてサイバーサイコにさせられた女優──という全てがテレビの企画で、出演者は皆殺し」っていう「いや、さすがナイトシティは狂ってるわ」としか言いようのない事件が一番インパクトがあった。
 その辺の街をうろついているモブと違い、サイバーサイコやフィクサー、シナリオに登場するNPCたちは、背後にドラマが垣間見えるのが面白い。

 ところで、動画の最後で言われている「レジーナはなぜサイバーサイコを生け捕りにさせるのか」という点については、私自身は動画主の人とは別の意見で、レジーナは裏で何か動いている悪人というわけではないと思っている。根拠は喋るピストル「スキッピィ」の反応とか。
 私は個人的にレジーナのことを「ナイトシティの粕川うらら」と呼んでるんだけど、トーキョーN◎VAを知らない人には余計分かりづらいかもしれない(笑)。粕川うららというのはトーキョーN◎VAという悪徳と背徳の街で、なんと「人権団体のリーダー」をやっていた元人権派ジャーナリスト。N◎VAではとても生きていけないだろう、こんな人間……。と思っていたところが、存外長いこと生き延びていた(さすがに今はもう姿を消している)。



 というのも、裏で実は黒いことをやっているからというよりは、そういう人物を利用としようとする大企業のロジックによって操り人形にはされるんだけど、結局操ってるほうがお互いに食い合って自滅してしまい、操られてる方がなぜか生き延びるという。台風の目が無風であるように、周りで権謀術数を張り巡らせる人間はいるものの、そういった人間の合間でなぜかサバイバルしてしまう……レジーナ・ジョーンズにも似たようなものを感じる。
 結果的に最後のオファーをしてくる謎の中国人と繋がっていて、回収されたサイバーサイコが二次利用されてるんじゃないかという点については同意なんだけど、レジーナ自身はそのことをあんまり知らないんじゃなかろうか。で、サイバーサイコの行き先としては、やっぱりマックスタック、というのが私の推論だ。

 ちなみに、凶悪なサイバーサイコを生け捕りにするなんて無茶を言う、と思われそうだが、実はそうでもない。高火力なサイバーサイコに正面から撃ち合うと満身創痍になるが、クイックハックで行動阻害を掛けて後ろからグラップルすれば、殺害(キル)と気絶(テイクダウン)はボタン一つの違いしかないからだ。
 もちろん、生け捕りにしてレジーナから報酬をもらった後ブチ殺して身包み剝ぐかどうかはプレイヤーに任されるわけだが(報酬をもらう前に殺すと報酬を減額される、はず)。