実は、この一つ前のふぃあ通の動画を見て、思うところは色々あったのだけれども、いかんせん「セッションにおける事故」に関する内容なので、過去に経験したセッションに触れずには書けそうになく、まとめに時間がかかっている。このため、順序が前後するものの、ここで新しく公開された動画について先に触れることにしたい。
なお、コメントの投稿者が以下のエントリを読む可能性は極めて低いとは思うが、大前提として、全世界に向けて公開される動画に対して質問をした勇気をまず称賛したい。以下に述べる見解は、基本的に私が最も経験を積んでいるトーキョーNOVAの環境を前提にしたものである。もちろん、そんな御大層なものではなく、「私ならどうするか(あるいはどうしていたか)」が、誰かの参考になれば……程度のものである。
一つ目のコメント
初めに、最初のコメントについて。「ネタバレを含んだシナリオ背景情報をプレイヤーにどの程度提示するべきか」に関しては、私の場合、どうしても思いつかなければセッションで想定される時間から逆算することが多かった。
シナリオ背景情報をプレイヤーに提示する場合、普通は情報収集判定を通じて伝えることになる。一つのシーンに費やす時間や情報収集項目の数はプレイスタイルにより異なるけれども、一つの情報収集シーンで項目一つ、*115分程度かかるとするなら、4人のプレイヤーで2周回るとおよそ2時間かかる。オープニングに1時間、クライマックスの戦闘とエンディングに1時間を割くとすれば、情報収集項目が8つでセッション所要時間は4.5〜5時間となる。ここにはキャラクター作成の時間は含まれず、特定の項目を調べると発生するイベントや途中発生する戦闘があるなら、それも計算に入れる必要がある。
そして、情報収集項目を8つと仮定するなら、アクトトレーラー、ハンドアウト、オープニングでプレイヤーに与えられた情報から、情報収集項目で与えられた8つの情報を加えることで、クライマックスへと到達できるかを考える。もしシナリオの状況が複雑で、項目が足りないのであれば増やす必要があり、セッション時間は伸びる。また、ここでカウントしているのは表舞台での情報収集のみである。舞台裏で情報収集を試みるプレイヤーがいれば、演出が不要な分、所要時間は多少減る。逆に、構造が単純すぎると情報量が少なすぎて、物足りなくなる可能性がある。
そして、情報収集項目を20、30と設定してもなお状況説明が不足するようであれば、シナリオの構造が複雑すぎると思われる。不要なプロットは整理・省略しないとプレイヤーのキャパシティを超えてしまうし、そもそもセッションが終わらない。
「情報収集項目なんてそんなに多くならないだろ」と思う人もいるかもしれないが、実はNPCをたくさん登場させるとそれだけで項目数は累進的に増える。「NPC○○の××について~~」という項目が都度増えるからだ。プレイヤーの立場だと、調べるまでは対象となる項目の重要性がわからない。NOVAであれば調べるたびにカード(≒リソース)を使うことになる。項目を用意せず、エキストラ扱いにする。あるいは、必要性の低いNPCはいっそ出さないというのも手だ。
また、後段に記載されているゲームマスター向け情報とプレイヤー向け情報の重複問題については、まずはプレイヤー向けの情報を記載し、ゲームマスター向けの情報は後に記載して、重複する内容は二度記載しない方が、読む側としては助かる。
例えば、プレイヤー向けには「○○という事件が発生し、△△という依頼者がプレイヤーの前に現れる」という導入を記し、ゲームマスター向けには「事件の真相は□□で、真犯人は××」と記述する方法だ。ゲームマスターも、初見でシナリオを読む際はセッションに参加するプレイヤーと同じ立場な訳で、段階的に情報を読み下していった方が理解しやすいと思う。
二つ目のコメント
次に、二つ目の「依頼者NPCの説明が長すぎて、必要な情報が抜けてしまう」というコメントについて。
これは恐らく、依頼者を通じてプレイヤーに与えようとしている情報が多すぎるのではないだろうか(某シナリオのように、冒頭の依頼人の説明だけで60行なんてことはないだろうけれど……)。
依頼人からの情報で必要なのは、最終的には「依頼人がPCに何をしてほしいか」だ。その他に必要な情報はプレイヤーがリサーチフェーズで自ら探れば良く、依頼段階で全てを説明する必要はない。
ただし、二点だけ注意が必要だ。依頼者が事情を知っているにもかかわらず(特にプレイヤーに不利になる)情報を伏せると、プレイヤーが「信頼できないNPCである」という印象を持ってしまう。そのため、元からそのような演出を意図しているのでない限り、「依頼者は詳しいことを知らない、だからプレイヤーに説明もできない」という前提に基づいたシナリオ構成の方が良いと思う。
そしてもう一つは「入り口は提示する必要がある」という点だ。依頼主は(とりあえずの)ゴールを提示するが、それだけではプレイヤーはどっちに向けて走ったらよいかわからない。依頼主が詳細を知らないといっても、何一つ知らないのでは話が進まない。例えば「警察に行ったが追い返されたのでプレイヤーに頼みに来た」(社会:警察で「警察で何があったか調べられる」)とか「探し人は企業に勤めていた」とか。とっかかりと情報収集項目だけわかれば、あとは芋蔓式にリサーチしていくことができる。
ちなみに、私自身は割と淡々と情報を出していく方だったので自分ではやっていなかったが、同卓したゲームマスターで「外連味のある演出を延々した後に、ゲームタームで結論をあっさり付け加える」をやっていた人がいて、上手い方法だと感心したことがある。
老人は一瞬、歯の抜けた口をあんぐりと開け、目をカッと見開いた後、辺りを窺うように左右を見回した。
「知らん、知らんぞ。わしは何も知らん」
怒ったように言う。
「昔はあんな子じゃなかったに、イワサキの連中などとつるみよって。もうここには戻ってもきやせん」
老人は背を向けて首を振り、後は誰ともなくぶつぶつと呟き続けた。もう君のことは目に入っていないようだ。
──というわけで、君は「情報収集項目:『イワサキとの秘密取引』」を入手したよ。
*1:ちなみに私の場合は、シーン一つが長めな代わりに、一度に2~3項目情報収集することが多い。

