今月のツッコミターイム

Role&Roll Vol.89

Role&Roll Vol.89


 うちのファンタジー世界の考察より。

 ダンジョンで“お宝”をゲットしても、間違っても金貨や金塊を選んではいけない。
 なぜなら金の比重は19.3。つまりは1リットルミルクパック1本分の大きさの金のインゴットで20kg近くあんのね。
 一人で持てる量が限られちゃうのよ。
 普通の人間が持ち運べる重さは体重の2/3くらい、とか。
 つまり金のインゴット2・3本程度しかテイクアウトできないワケだ。
 目の前に宝の山がありながらそれじゃくやしいでしょ?
 持ち帰るのは宝石にしときましょ。


 すげえなおい。筆者の鳥取は金貨をポイ捨てできるほどの財宝が報酬で出てくるのか。

 ちなみに、私の知る限り「手に入る財宝の重さ(というか、かさばり具合……エンカンブランスと呼ばれる)」を明確にルール化しているのはD&Dくらいではないだろうか。海外の古いゲームでいくつか、荷物の重さに関するルールがあるゲームはあった記憶があるが、少なくとも今プレイできる国産TRPGで「財宝が手に入れば手に入るほど重くなって動けなくなる」のをルール化しているものはないはず。重さに関するルールがないゲームで(意図的な雰囲気付けとしての演出シーンを除けば)金貨や金を捨てて帰るのは賢い行いとは言えないだろう。
 さて、そのD&Dの場合、貨幣は白金、金、エレクトラム、銀、銅に分かれており、コイン1枚が1cn(エンカンブランス*1)。財宝は白金貨から銅貨までバラバラに入り混じって登場する。貨幣の価値を保証する国家などが存在するなら兌換レートよりも高価値の貨幣などがあってもおかしくないが、古代の遺跡やら何やらから出土する貨幣が現行の貨幣と同じ貨幣体系にあるとは限らない。よって何が彫られていようが「素材としての価値しかない」のだ。そして、今紹介した貨幣単位からわかるように、金を上回る交換レートの貨幣は白金貨しかない。白金貨以外は全部、金より重いのだ。
 確かに宝石は軽い。D&Dでも荷物を軽くするために手持ちの財産を宝石に換えたりすることはあるが、宝石には欠点もある。特にリアリティ()を重視するDMの場合気をつけなければいけないのが「ドラゴンブレス(等)を吐かれて、宝石が炭化して価値がなくなった」と言われることだ。そんなバカなという人もいるかもしれないが(私もそう思う)、実はこれを常套手段とするDMに複数出会ったことがある。D&Dのマスタールールにはドラゴンブレスによるマジックアイテムの劣化ルールがあるため、マジックアイテムよりも弱い通常アイテムの宝石などはあっさり壊れても不自然ではない。ただ、ダイヤモンドが炭化するというのは相当な高温(600度くらい)で熱する必要があるのだが……。そのため、一回持ち帰った財宝を宝石に換えることはあるが(保管しやすいし、持ち帰った後なら危険に遭うことは少ない)、宝石だけを選んで持ち帰るのは危険もともなう。また、宝石はそのままの形では貨幣として使用できないので、使うために貨幣などに両替する時手数料などを取られる可能性もある。(確か、当時CD&Dプレイヤーにとってバイブルだった「D&Dのよくわかる本」ではそうなっていたはず。今現物が手元にないので確認できないが)。
 何より、D&Dにおいて金貨を置いて帰るのに賛成できない理由は「置いて帰った金貨は経験点に反映されない」ためだ。CD&Dの経験点は持ち帰った財宝の価値金貨1枚につき1点。つまり金貨を置いていけというのはその分の経験値を諦めて帰れというのに等しい。だから、私がセッションしていた頃は「銅貨は捨てろ。銀貨は可能な限り持て、金貨が手に入ったらその場で持てなくなった分だけ銀貨を置いていけ」というのが冒険者のセオリーだった。仮に金貨を置いて帰るようなプレイをするとすれば、それは1点2点の経験値にこだわる意味の薄くなった高レベル環境だけではないだろうか。

 この記事、確かに金の比重について書かれている部分に間違いはないのだが……同一重量で金より価値のある素材などまさに宝石ぐらいしかなく稀であり、金貨も金も持って帰るなという結論は余りにも極論だ。宝石以外持って帰らないことにしたら多くのダンジョンシナリオはほとんど無報酬になってしまうのではないだろうか? くれぐれも、この記事を読んだからといって、重さの概念すらないゲームで、見つけた金貨を持って帰るかどうかを巡ってGMや他のプレイヤーと議論などしてはいけない。特別な事情がない限り、持って帰っても何の問題もないはずだ。

*1:なお、エンカンブランスは重さだけではなく持ちやすさ、運びやすさも加味した便宜上の単位であり、金より比重の軽いものであっても同じコインなら同じ1cnである。